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自宅療養と休業補償給付(労災の裁判例)


労災の休業補償給付の支給に関して、自宅療養が問題になった裁判例を紹介します。

仙台地裁平成24年1月12日判決

 医師の指示・指導がなく、自宅療養による休業を行った場合に、休業補償給付が支給されるか?が争われた事案です。

事案の概要

 原告は、平成20年6月19日午後4時ころ、仙台市内のマンション解体現場において、鉄くずを4トントラックに積み込む作業に従事中、誤ってトラックの荷台から転落し、頭部を地面に強打して負傷した。

 原告は、平成20年6月19日、本件労災事故後直ちに仙台市立病院を受診し、急性硬膜外血腫、頭部骨折、急性硬膜下血腫、外傷性クモ膜下出血、気脳症の診断を受けて同病院に入院し、その後平成21年11月30日までの間に、同年7月16日から同年11月20日までの期間を除き、病院に入通院をした。

 原告は、本件通院中断期間中、就労して賃金を得ることはなく、その間、医療機関を受診して医師の治療や薬剤の投与を受けることもなかった。

 原告は、平成21年2月19日、処分行政庁に対し、本件通院中断期間に係る休業補償給付の支給を請求したが、これを受けた処分行政庁は、同年5月25日付けで、本件通院中断期間中は療養を受けていないことを理由として、休業補償給付を支給しない旨の処分をした。なお、本件申請に際して提出された申請書の「診療担当者の証明」欄は空欄とされていた。

裁判所の判断

 裁判所は、自宅療養による休業について休業補償給付が支給されるのは、①医師の指示・指導に基づく場合か、②医師の医学的知見に基づく判断により、客観的に見て自宅療養のための休業の必要性が明らかである場合であることが必要だと判断しました。

 労災保険は、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害又は死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い、あわせて、業務上の事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかった労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護、労働者の安全及び衛生の確保等を図り、もって労働者の福祉の増進に寄与することを目的とし、労基法に基づく使用者の災害補償責任を補完する関係にあって、その財源を使用者である事業主が負担する保険料及び国費からの補助によって賄うものとされている。

 労災保険法に基づく休業補償給付は、このような労災保険制度に基づく保険給付の一つとして、労働者が業務上の負傷をし、又は疾病にかかった場合において、業務上の負傷又は疾病による「療養のため、労働することができないため」に賃金を受けない場合に、当該労働者の請求に基づいて行われるものであり、「業務上の負傷又は疾病による療養のため労働することができないため」に賃金を受けない日の第4日目以降の日について、同法所定の給付基礎日額に所定の割合を乗じた金額を支給するものである。

 上記のとおりの労災保険の目的、性質及び財源並びに休業補償給付の内容等に加え、休業補償給付の請求書に「療養の期間、傷病名及び傷病の経過」の記載が要求され、これらの記載事項については、診療担当者の証明を受けなければならないとされていることに鑑みると、休業補償給付の支給要件である、当該労働者が「業務上の負傷又は疾病による療養のため労働することができない」場合に当たるか否かについては、判断の客観性及び公正確保の見地から、医師の医学的知見に基づく判断を要するというべきである。

 このような見地からすると、自宅療養が、療養補償給付の対象となる療養に含まれるとしても、休業補償給付の支給要件を満たす療養及び療養のための休業の必要性が認められるためには、当該自宅療養及び自宅療養のための休業が、労働者の担当医師の事前の指示ないし指導に基づくものであるか、担当医師の事前の指示ないし指導に基づくものでない場合には、医師の医学的知見に基づく判断により、客観的に見て自宅療養及び自宅療養のための休業の必要性が明らかであると証明されたものであることを要するものと解するのが相当である。

 自宅療養が事前の医師の指示ないし指導によるものでない場合には、当該自宅療養の時点における医師の判断が存在しなかった以上、判断の客観性及び公正確保の見地から、労働者(原告)による自宅療養及び自宅療養のための休業の必要性の立証の成否については、慎重に判断することを要するというべきところ、本件においては、本件通院中断期間の前後で異なる病院の医師が原告の診療を担当していたのであるから、このような場合、医師の医学的知見に基づく判断により、客観的に見て自宅療養及び自宅療養のための休業の必要性が明らかであるというためには、特段の事情のない限り、これらの必要性が認められることについて、当該複数の担当病院ないし医師の判断が一致していることを要するというべきである。


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