労災保険の給付基礎日額に関して、スライド制を取り上げます。
給付基礎日額の最低保障制度
給付基礎日額は、労基法の平均賃金に相当する金額が、原則です(給付基礎日額参照)。しかし、給付基礎日額が非常に低額な場合を是正するため、給付基礎日額には、最低保障額が定められています(労災保険規則9条の4)。算出した給付基礎日額の金額が、最低保障額を下回る場合は、最低保障額が給付基礎日額となります。
スライド制
労災保険給付が長期間に及ぶ場合に、実質的な稼得能力を反映させるため、給付基礎日額に賃金水準等を踏まえた一定率(スライド)を乗じた額を基礎として給付が行われます。これをスライド制といいます。
休業(補償)給付のスライド
四半期ごとの平均給与額が±10%を超えて変動した場合、給付基礎日額に平均給与額の変動率を基準として、厚労相が定める率を乗じた額を改定後の給付基礎日額として、休業(補償)給付を行います(労災保険規則9条の2)。
また、療養開始後1年6か月を経過したときに、休業(補償)給付を行う場合、年齢階層別の最低・最高限度額を踏まえた給付基礎日額に基づいて給付がなされます。
年金の保険給付のスライド
基礎日額の年度ごとの平均給与額の変動率を基準に、厚労相が定める率を乗じた額を改定後の給付基礎日額として、年金保険給付が行われます(労災保険規則9条の5)。
休業(補償)給付と同様に、年齢階層別の最低・最高限度額を踏まえた給付基礎日額に基づいて給付がなされます。
なお、障害(補償)一時金、遺族(補償)一時金、葬祭料の給付基礎日額についても年金の保険給付と同じスライドが行われます(労災保険法8条の4)。この場合、年齢階層別の最低・最高限度額の適用はありません。