厚労省から公表された令和6年度の精神障害の労災補償状況の概要を紹介します。
令和6年度の精神障害の労災補償状況
令和6年度の精神障害の労災の請求件数は、3,780件でした。労災かどうかの決定が行われたのは、3,494件でした。精神障害が労災と認定されたのは、1,055件で、労災の認定率は30.2%でした。
この内、過労自殺の労災の請求件数は、202件でした。労災かどうかの決定が行われたのは、215件でした。労災と認定されたのは、88件で、労災の認定率は40.9%でした。
精神障害の労災の請求件数は、増加傾向にあります。
業種別の精神障害の労災請求件数
業種別の精神障害の労災請求の件数の多い上位5つは、以下のとおりです。
業種 | 労災請求件数 |
社会保険・社会福祉・介護事業 | 589件 過労自殺6件 |
医療業 | 389件 過労自殺8件 |
道路貨物運送業 | 145件 過労自殺7件 |
その他の事業サービス業 | 127件 過労自殺8件 |
情報サービス業 | 127件 過労自殺7件 |
社会保険・社会福祉・介護事業、医療業とも約75%が女性で、女性の比率が高くなっています。
業種別の精神障害の労災認定件数
精神障害が労災と認定された件数の多い業種の上位5つは、以下のとおりです。
業種 | 労災認定件数 |
社会保険・社会福祉・介護事業 | 152件 過労自殺3件 |
医療業 | 118件 過労自殺8件 |
道路貨物運送業 | 69件 過労自殺6件 |
総合工事業 | 46件 過労自殺9件 |
飲食店 | 44件 過労自殺4件 |
請求件数上位の「その他の事業サービス業」は30件で6位でした。「情報サービス業」は19件で15位でした。
職種別の精神障害の労災認定件数
精神障害で労災と認定された件数の多い職種の上位5つは、以下のとおりです。
職種 | 労災認定件数 |
一般事務従事者 | 97件 過労自殺1件 |
保健師・助産師・看護師 | 70件 過労自殺1件 |
自転車運転従事者 | 62件 過労自殺3件 |
介護サービス職業従事者 | 62件 過労自殺2件 |
営業職業従事者 | 51件 過労自殺8件 |
年齢別の精神障害の労災認定件数
年齢別の精神障害の労災認定件数は、40代の283件(内、過労自殺31件)が最多です。次いで、30代の245件(内、過労自殺17件)、20代の243件(内、過労自殺16件)と続きます。
精神障害の労災は、40代が若干多いですが、20代~50代まで、世代に関係ないことがわかります。
時間外労働別の精神障害の労災認定件数
1か月平均の時間外労働時間別の精神障害の労災認定件数を見ると、100時間以上120時間未満が最多です。
1か月平均の時間外労働時間数 | 労災認定件数 |
100時間~120時間未満 | 74件 過労自殺19件 |
40時間~60時間未満 | 70件 過労自殺13件 |
60時間~80時間未満 | 52件 過労自殺8件 |
20時間未満 | 49件 過労自殺4件 |
80時間~100時間未満 | 48件 過労自殺9件 |
精神障害の出来事別の労災認定件数
精神障害の労災認定基準の具体的出来事別の労災認定件数の上位5つは、以下のとおりです。
具体的出来事 | 労災認定件数 |
上司等から身体的攻撃、精神的攻撃等の パワハラを受けた | 224件 過労自殺10件 |
仕事内容・仕事量の大きな変化を生じさせる 出来事があった | 119件 過労自殺 |
顧客や取引先、施設利用者等から 著しい迷惑行為を受けた | 108件 過労自殺1件 |
セクシャルハラスメントを受けた | 105件 |
業務に関連し、 悲惨な事故や災害の体験・目撃をした | 87件 |
精神障害の労災認定は、職場の人間関係に起因していることがわかります。
なお、具体的出来事別の請求件数のトップは、ダントツで「上司とのトラブル」でした。労災かどうかに関わらず、職場の人間関係が原因で、適応障害やうつ病などの心の病を発症する労働者が多いといえます。