通勤災害の要件である「合理的な経路及び方法」とは、どういう意味ですか?
合理的な経路・方法
通勤途中の災害が通勤災害と認められるには、通勤が「合理的な経路及び方法」により行われる移動行為であることが要件です。
※通勤災害と労災参照
合理的な経路
労働者が、通勤のために通常利用する経路であれば、複数の経路があっても、それらの経路はすべて合理的な経路に当たります。
たとえば、会社に届出ている鉄道・バス等の通常利用する経路やこれに代替することが考えられる経路は、合理的な経路といえます。
経路の道路工事やマイカー通勤者が貸切車庫を経由して通る経路等、通勤のためにやむを得ずとることになる経路についても合理的な経路に当たります。
さらに、子どもを他に監護する者がいない場合に、子どもを保育所や親戚等に預けるためにとる経路についても、そのような立場の労働者であれば、当然、就業のために取らざるを得ない経路といえるので、合理的な経路に当たります。
しかし、合理的な理由もなく、著しく遠回りとなるような経路を取った場合は、合理的な経路とは認められません。また、経路は手段と併せて合理的なものである必要があります。そのため、たとえば、鉄道の線路上を歩いて通る場合は、合理的な経路ではありません。
通勤に通常随伴する行為
通勤に通常随伴する行為に伴って特例的に使用した経路であって、通常の経路を若干迂回した経路は、合理的な経路と認められます。
通勤に通常随伴する行為とは、通勤を継続するために必要性又は合理性を有する行為を意味します。たとえば、定期券利用者が乗車駅以外の最寄り駅に定期券を購入するために立ち寄った場合やトイレのために経路近くの公衆トイレに立ち寄った場合などです。
合理的な方法
鉄道・バス等の公共交通機関を利用する場合、自動車・自転車等を本来の用途に従って使用する場合、徒歩の場合等、通常用いられる交通方法は合理的な方法ということができます。
しかし、運転免許を取得していないにもかかわらず、自動車を運転する場合や自動車を泥酔して運転する場合は、合理的な方法とは認められません。
なお、泥酔まで至らない飲酒運転や免許証の更新を忘れたため無免許運転した場合などは、必ずしも合理性を欠くとは解されていません。ただし、これらの場合は、諸般の事情を考慮し、労災保険の給付の支給制限が行われることがあります。