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精神障害の再発・悪化と労災の認定


うつ病などの精神障害は、いったん治って、会社に復帰しても、再発することが多くあります。では、精神障害が再発した場合、労災と認定されるのでしょうか?

精神障害は完治しない?

 うつ病をはじめとする精神障害には、完治という概念がないそうです。症状が現れなくなった状態又は安定している状態を完治ではなく、「寛解」と呼んでいます。

 労災保険では、寛解して、通常の就労(1日8時間の労働)ができる状態を、「治ゆ」、つまり、症状固定の段階にあると判断します。

 精神障害は、寛解した後も再発することが多々あります。また、治ゆの状態に至らずに職場復帰したため、精神障害が悪化することもよく見られます。このような精神障害の再発と悪化は、労災の認定において、どのように扱われるのでしょうか?

精神障害の治ゆ

 労災保険では、次の場合、精神障害は「治ゆ」したと考えています。

精神障害の治ゆ

①医学的なリハビリテーション療法の実施後、終了した状態

②投薬等の治療が続いていても寛解と診断され、通常の就労が可能な状態

精神障害が再発した場合

 精神障害の再発が労災として問題になるのは、被災労働者が精神障害を発症していたが治ゆの状態になり、職場復帰した後、業務による心理的負荷を受け、精神障害を発症した場合ということになります。

 再発の場合は、以前の精神障害と今回の精神障害は、別個のものとして判断します。したがって、再発した精神障害について、通常の精神障害と同じように、精神障害の労災認定基準に従って、業務による強い心理的負荷があったか?を判断します。

心理的負荷の評価の仕方(精神障害の労災認定基準)

精神障害の労災認定基準において、心理的負荷の強度をどのように評価するのか?を解説します。

精神障害が悪化した場合

 精神障害が再発ではなく、悪化した場合は、労災ではどのように扱っているのでしょうか?ここでいう、精神障害の悪化とは、精神障害が治ゆする前に職場復帰し、業務による心理的負荷を受けたことにより、精神障害の症状が悪化したというケースを想定しています。

 この場合、精神障害が悪化する前に、業務による強い心理的負荷があったとしても、労災とは認定されることはありません。ただし、「特別な出来事」に該当する事実があり、その後おおむね6か月以内に自然的経過を超えて著しく悪化したと医学的に認められる場合、悪化した部分についてのみ、労災と認定されます。

特別な出来事(精神障害の労災認定基準)

精神障害の労災認定基準の「特別な出来事」について解説します。

精神障害は、再発したのか?悪化したのか?

 精神障害の再発と悪化では、労災での取扱いが大きくことなります。悪化の場合、労災と認定されるハードルが非常に高いです。精神障害が治ゆしていたか?は、主治医の意見が大きく影響します。

 なお、労災かどうかを最終的に判断するのは、裁判所です。裁判所は、精神障害の悪化の場合も、労災の認定基準よりは、緩やかに業務起因性を判断しています。精神障害の再発や悪化の場合、裁判を視野に入れ準備しておくことが必要です。

2023年9月1日に精神障害の労災認定基準が改正

 精神障害の労災認定基準が改正され、2023年9月1日から新基準によって、労災認定が行われます。新基準では、精神障害の悪化の場合、特別な出来事がなくても、業務による強い心理的負荷によって、悪化した場合は、悪化した部分について、労災と認められます。


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