労災保険における再発の問題を取上げます。
療養補償給付・休業補償給付は症状固定まで
労災と認定された後、給付を受ける療養補償給付と休業補償給付は、症状固定(治ゆ)になれば支給されません。
症状固定に至った後、傷病が再び発症したり、悪化したりすることがあります。このような場合を労災保険では、再発として扱います。再発は、一定の要件を充足すれば、再度、療養補償給付や休業補償給付の給付を受けることができます。
ここでは、一般的な傷病についての話しをします。
うつ病等の精神障害については、以下の精神障害の再発・悪化と労災の認定をご覧ください。
再発の支給要件
再発による労災保険の給付を受けるためには、次の3つの要件をすべて満たしていることが必要です。
労災保険で再発と認められる要件
(1)再発した現在の傷病と当初の業務上の傷病との間に医学上の関連性がある
(2)症状固定時の症状に比べて現在の傷病が憎悪している
(3)治療効果が期待できる
(1)に関しては、再発の原因が業務以外の原因によるものと認められるときは、労災保険の給付対象とはなりません。
再発に関する裁判例として、神戸地裁昭和51年1月16日判決があります。神戸地裁は上記の3つの要件が必要であり、かつ、3つの要件で足りると判断しています。
再発の労災保険の給付対象
再発は、一度、症状固定に至った症状が、再び出現し又は憎悪したものです。労災保険の対象となるのも、再び出現した症状又は憎悪した部分です。つまり、悪化した症状を症状固定時の状態に回復させるまでの療養が労災として扱われます。
症状固定時の状態に回復せずに、一定の症状を残したまま症状固定に至った場合は、その時点で症状固定(治ゆ)と判断し、残った障害について後遺障害の評価が行われます。
便宜上の再発として扱われるもの
骨折に対して髄内釘による骨接合術を行い、症状固定後に装着金属を抜去することがあります。この場合、症状固定後に症状が再び出現したり、憎悪したわけではありませんが、便宜上、再発して扱われています。
主治医や専門医の意見が重要
再発が労災として認められるか?は、傷病の種類、再発までの期間、症状の比較など医学的な検討が必要です。主治医の意見や専門医の意見が重要になります。労災保険の請求の前に、主治医に相談するなどの準備が必要になるでしょう。