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労災の再発に関する裁判例


労災保険の再発について判断した裁判例を紹介します。

神戸地裁昭和51年1月16日判決

 労災保険において、一度、治ゆと認定された業務上の傷病が、再発したと認められるための要件を示した裁判例です。

 ※労災保険と再発も参照

事案の概要

 原告は、訴外A社B工場に起重機運転手として勤務していたが、昭和42年1月13日同工場内において、クレーンのワイヤーロープの取替作業を行うため、ロープを取りに点検台上に行き、そこからロープをもつてクレーンに帰ろうとしたとき、点検台上高さ約7メートルのところから足を踏みはずし地上に転落した。

 本件事故により、原告は、頭部挫創、耳介後部挫創、右手指挫創、右大腿部挫創等の傷害を蒙り、前同日より病院に入院加療したが、昭和42年5月8日、右肩および頸部の疼痛、肩関節の運動制限を残して一応治ゆ(症状固定)したものとされた。

 その後原告は、昭和44年1月頃から頸や右肩に痛みを感じ治療を受けていたが、昭和46年9月頃からますますその症状が激しくなり、就労も困難な状態に至つたので、同年9月11日被告に対し、上記傷病の再発による療養費についての療養補償給付の請求をしたところ、被告は昭和46年12月15日付でこれを支給しない旨の処分をした。

裁判所の判断

 裁判所は、以下のように、再発が労災と認められる要件として、3つを挙げています。

 労災保険法で定められる療養補償給付が行われるのは、労働基準法75条の事由が生じた場合、すなわち、労働者が業務上負傷しまたは疾病にかかつた場合であり、一旦治ゆと認定された場合も業務上負傷または疾病の再発があれば、再発も当然労災保険の給付対象となるのであるが、ここに再発とは、一旦治ゆ(治ゆとは、負傷の場合は創面がゆ着しその症状が安定して医療効果が期待できなくなったとき、疾病の場合は急性症状がおさまり、なお慢性症状が残っていても、その症状が安定して医療効果が期待し得ない状態になったときのことをいうものと解される。)とされた者について、その後にその傷病との間に医学上の因果関係が認められる傷病が発生したときをいうものであり、労災保険法による療養補償給付を得るためには、再発が治ゆによって一旦消滅した労災保険法上の療養補償給付義務を再び発生させるものである以上および前記治ゆの定義からみて、①現傷病と業務上の傷病である旧傷病との間に医学上の相当因果関係が存在し、②治ゆ時の症状に比し現傷病の症状が増悪しており、かつ③治療効果が期待できるものでなければならず、かつこれをもって足ると解するのが相当である。

 再発の要件①の存否については、労災保険法が労働者の業務上の傷病等につき「迅速かつ公正な保護」を目的としている点、および、再発が業務上の傷病の連続であり、独立した別個の負傷または疾病でない点に照らすと、旧傷病が現傷病の一原因となっておりかつそれが医学上相当程度有力な原因であることが認められれば足るものと解する。


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