労災保険の対象となるのは労働者です。そのため事業主や自営業者は労災保険の対象外になりますが、事業主等も特別加入することで労災保険から給付を受けることができます(労災保険の特別加入制度参照)。
特別加入者の業務上外の認定
特別加入者の業務や作業内容は、他人の指揮命令下で行われません。業務や作業内容を自分で決定しています。そのため、どこまでを業務上災害と認定するのか?という問題があります。
労働行政の考え方
行政は、通達によって、特別加入者が業務上災害として保護される業務の範囲は、労働者が行う業務に準じた範囲にとどまるとしています(昭和50年11月14日基発671号等)。
特別加入者が中小事業主の場合、具体的には、次の場合に発生した災害は業務上災害と認定されます。
特別加入者が業務上災害として保護される範囲
(1)特別加入申請書に記載された特別加入申請に関する事業のための行為及びこれに直接付随する行為
ただし、事業主の立場で行う事業主の本来的行為は除きます。
(2)労働者の時間外労働に応じて就業する場合
(3)就業時間内に接続して行われる準備,後始末等の業務を特別加入者のみで行う場合
(4)(1)~(3)の就業時間内における事業場施設の利用中及び事業場施設内での行動中の場合
(5)当該事業の運営に直接必要な業務
ただし、事業主の立場で行う事業主の本来的行為は除きます。
(6)通勤途上で、事業主の提供する労働者の通勤専用交通機関の利用中及び突発事故による予定外の緊急出勤の場合
(7)当該事業運営に直接必要な運動協議会その他の行事に労働者を伴い出席する場合
最高裁平成24年2月24日判決
最高裁は、労災保険の特別加入制度について、「中小事業主の特別加入の制度は、労働者に関し成立している労災保険の保険関係を前提として、当該保険関係上、中小事業主又はその代表者を労働者とみなすことにより、当該中小事業主又はその代表者に対する法の適用を可能とする制度」であると判断しています。
そして、最高裁は、労災「保険関係は、労働者を使用する事業について成立するものであり、その成否は当該事業ごとに判断すべき」と述べています。
以上を前提に、最高裁は、建設の事業「を行う事業主については、個々の建設等の現場における建築工事等の業務活動と本店等の事務所を拠点とする営業、経営管理その他の業務活動とがそれぞれ別個の事業であって、それぞれその業務の中に労働者を使用するものがあることを前提に、各別に保険関係が成立する」とし、「建設の事業を行う事業主が、その使用する労働者を個々の建設等の現場における事業にのみ従事させ、本店等の事務所を拠点とする営業等の事業に従事させていないときは、上記営業等の事業につき保険関係の成立する余地はない」と判断しました。