労災事故の典型である陸上貨物運送業における動作の反動・無理な動作を取上げます。
- 1. 荷受け作業中に腰を痛めた…
- 2. 陸上貨物運送業における動作の反動・無理な動作
- 2.1. 陸上貨物運送業における動作の反動・無理な動作の特徴
- 2.1.1. 陸上貨物運送業における動作の反動・無理な動作の特徴
- 3. 動作の反動・無理な動作の労災認定のポイント
- 3.1. ①災害性腰痛
- 3.1.1. 労災となるケース
- 3.1.2. 労災認定のポイント
- 3.2. ②非災害性腰痛
- 4. 主な労災保険の補償
- 4.1. 治療費
- 4.2. 休業補償
- 4.3. 障害補償給付
- 5. 陸上貨物運送業の動作の反動・無理な動作のよくある誤解
- 6. 陸上貨物運送業における動作の反動・無理な動作のチェックリスト
- 7. 陸上貨物運送業における動作の反動・無理な動作の事例
- 8. 陸上貨物運送業における動作の反動・無理な動作でケガをされた方へ
荷受け作業中に腰を痛めた…

あのときちょっと無理して持ち上げなきゃよかったって…今でも思うんだよね。

運送の現場だと、ちょっと無理するが日常になってること、あるよね。

「そんなの自己責任だろ」って言われそうで、言い出しづらくてさ…

でもね、それも立派な労災事故なんだよ。ちゃんと補償を受ける権利があるんだ。
陸上貨物運送業における動作の反動・無理な動作
動作の反動・無理な動作の労災事故は、重い荷物を持ち上げたり、不自然な姿勢で作業した際の「反動」や「無理な動作」で生じる事故類型です。
厚労省が発表した「令和6年度の労働災害の発生状況の分析等の概要」によると、動作の反動・無理な動作の死傷者数は、22,218人でした。その内、陸上貨物運送業における動作の反動・無理な動作の死傷者数は、2,850人でした。陸上貨物運送業における動作の反動・無理な動作は、労災事故の典型といえます。
陸上貨物運送業における動作の反動・無理な動作の特徴
陸上貨物運送業における動作の反動・無理な動作の事故には、以下のような特徴があります。
陸上貨物運送業における動作の反動・無理な動作の特徴
①荷主・納品先とのスケジュール制約 → 無理な姿勢・急な動作になりやすい
②ドライバーが「一人で作業」するケースが多い → 目撃者がいない
③荷姿が不揃い・重量が安定しない → 想定外の負荷がかかる
④フォークリフト等の補助なしで手積み・手降ろしする場面も多い
動作の反動・無理な動作の労災認定のポイント
動作の反動・無理な動作によるケガは、腰痛が多いです。労災は、業務上腰痛を①災害性腰痛と②非災害性腰痛に分けています。それぞれ、労災の認定基準を定めています。

動作の反動・無理な動作による腰痛は、①災害性腰痛です。
①災害性腰痛
災害性腰痛は、転倒など腰の負傷を原因とする場合が典型です。重量物の取扱い作業中に不自然な姿勢をとったことが原因の場合などが災害性腰痛として扱われます。
陸上貨物運送業の場合は、荷役作業中の転倒や不自然な姿勢を取ったことが原因の場合、災害性腰痛として扱われます。
労災となるケース
重量物の運搬中に転倒した
重量物を持ち上げる際に不適当な姿勢を取り、腰に異常な負荷がかかった

災害性腰痛の労災認定基準は、以下の「災害性腰痛の労災認定」を参照
転倒等の事故以外が原因の場合は、以下のポイントを押さえておく必要があります。
労災認定のポイント
①取扱い重量物の形状、重量
②作業姿勢
③持続時間
④回数
⑤腰に作用した力の程度

これらの状況を記録しておくことが重要です。
②非災害性腰痛
動作の反動・無理な動作による腰痛は、非災害性腰痛ではありません。
非災害性腰痛は、突発的な事故等ではなく、腰に過度な負担がかかる作業に長期間従事することで発症する腰痛です。慢性的な腰痛を労災の対象にするものです。
陸上貨物運送業の場合は、長時間の運転業務に長期間にわたって従事していたことによって発症した腰痛が非災害性腰痛の典型です。

非災害性腰痛の労災認定基準は、以下の「非災害性腰痛の労災認定」を参照
主な労災保険の補償
動作の反動・無理な動作の事故で労災と認定された場合の主な労災保険の補償は、以下のとおりです。
治療費
労災保険から治療費が支給されます。労災の指定病院で治療を受けた場合は、病院へ直接、支払われます。労災の指定病院以外で治療を受けた場合は、いったん、治療を立替える必要があります。

詳しくは、以下の「労災の治療費」を参照
休業補償
療養のため仕事ができなかった場合、休業補償給付が支給されます。休業補償給付は、給付基礎日額の60%が支給されます。休業補償給付とは別に、特別支給金として給付基礎日額の20%が支給されます。

詳しくは、以下の「休業(補償)給付」を参照
障害補償給付
後遺障害が残った場合、後遺障害等級に応じて障害補償給付が支給されます。1級~7級は年金、8級~14級は一時金として支給されます。

詳細は、以下の「障害(補償)給付」を参照
陸上貨物運送業の動作の反動・無理な動作のよくある誤解
陸上貨物運送業の動作の反動・無理な動作の事故のよくある誤解をまとめました。
| よくある誤解 | 正しい理解 |
| 自分の不注意だから労災じゃない | 労働者に不注意があっても労災になる |
| 腰痛は労災にならない | 重量物の取扱い作業中に不自然な姿勢をとったことが原因なら労災 |
| 腰痛の持病があったから労災にならない | 重量物の取扱い作業中に不自然な姿勢をとったことが原因で腰痛が悪化した場合は悪化した範囲で労災になる |
| 誰も見てないから労災にならない | 腰痛を発症した状況を詳細に記録することで労災と認められる可能性あり |
| 会社が労災と認めないと申請できない | 労災と認めるのは労基署、労働者が労基署に労災保険の請求できる |
陸上貨物運送業における動作の反動・無理な動作のチェックリスト
陸上貨物運送業における動作の反動・無理な動作による事故に遭った際の行動チェックリストです。参考にしてみてください。
| チェック項目 | 確認ポイント |
| □作業中の腰痛 | 日時、場所、作業内容、荷物の重量、姿勢など事故状況を記録 |
| □医師の診断書の入手 | 医師に業務中の事故と伝える 労災指定病院の場合は診断書は不要 |
| □雇用契約の有無 | 実態は雇用契約ではないか?委託契約等の内容を確認 |
| □労災保険の請求に必要な資料・書類の入手 | 労基署や弁護士に相談し確認 |
| □労災保険の請求 | 会社が労災保険の請求をしてくれない場合は自分でする |
| □弁護士に相談 | 特に会社が労災保険の請求をしてくれない場合は弁護士に相談するのをおすすめ |
陸上貨物運送業における動作の反動・無理な動作の事例
50代男性の長距離ドライバーが荷下ろし中、パレットが崩れかけたのをとっさに支えたときに腰を痛めた。その場では我慢して、荷下ろし作業を続けた。翌日整形外科を受診し腰椎捻挫と診断された。
荷下ろし作業は一人で行っており、目撃者はいなかったが、労基署での事故状況の詳細の聞き取りの結果、本人の申告に不自然な点はないとして、労災と認定された。休業補償を受けながら治療し、復職できた。
陸上貨物運送業における動作の反動・無理な動作でケガをされた方へ
動作の反動・無理な動作によるケガは、いつい自分の不注意にせいでは?と思いがちです。しかし、陸上貨物運送業における動作の反動・無理な動作によるケガは、労災事故の典型です。まずは会社に報告し、病院で治療を受けましょう。そして、日時・場所・作業内容といった事故状況を整理し、労災保険の請求をしましょう。
会社が労災保険の請求の手続きに協力的でない場合は、一人で悩まず、弁護士に相談することで、労災保険の補償を受けられる可能性が広がります。法律事務所エソラは、労災の初回相談は無料です。

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