就業時間中の災害は、常に労災と認定されますか?
就業時間中の災害は原則として労災
就業時間中の災害は、業務遂行性が認められ、かつ、業務の逸脱行為や恣意的な行為といった業務起因性を否定する事情がなければ、労災と認められるのが原則です。
就業時間中の災害は、以下の4つの災害に分類することができます。
就業時間中の災害
①作業中の災害
②作業中断中の災害
③作業に伴う必要行為または合理的行為中の災害
④作業に伴う準備行為または後始末行為中の災害
①作業中の災害
事業場内で業務に従事している最中に生じた災害は、通常、作業用具・器具、施設、作業環境、同僚・自らの過失などの作業の管理過程から発生します。そのため、業務起因性が推定されます。したがって、特段の事情がない限り、労災と認められます。
もっとも、業務に従事していても、①その業務が担当業務かどうか?②作業を離脱している際に生じたのではないか?が問題になることはあります。
②作業中断中の災害
就業中の労働者が、トイレや水分補給のために、一時的に作業を中断することがあります。このような行為は、生理的要求を満たすものです。したがって、行為自体は業務行為ではありません。
しかし、業務遂行に直接関連するものでなくても、その行為をしなければ、業務遂行に支障が生じることがあります。労働者が恣意的に業務を中断するわけではないため、業務に付随する行為と捉えることができます。
当該行為が業務行為に付随する行為かどうか?は、作業の種類・性質、事業場における作業管理の状況等に即して判断する必要があります。もっとも、労働者の恣意的行為や私的逸脱行為といった業務起因性を否定する特別な事情がなければ、労災と認定されます。
③作業に伴う必要行為または合理的行為中の災害
災害発生時に労働者が行っていた行為が、本来の業務ではないが、単なる私的行為ともいえない性質のものがあります。
当該行為に合理性または必要性があるか?が、業務起因性の判断基準です。
合理性は、当該業務を担当する労働者として合理的な行為かどうか?という視点で判断されます。
必要性は、当該労働者が担当業務を遂行するうえで必要な行為か?という視点で判断されます。
その判断は、客観的事情によって行われ、当該労働者の主観は、客観的事情のもので、通常人であればそうしたであろうと認められない限り、判断の基礎にはされません。
④作業に伴う準備行為または後始末行為中の災害
通常、労働者の就業の過程には、前後における準備や後始末が含まれます。
たとえば、始業前の機械の整備や、終業後の作業管理の整理などの行為です。これらの行為は、業務行為に通常または当然に付随するものとして業務行為の延長と捉えることができます。
しかし、すべてが業務の準備行為や後始末行為というわけではありません。業務行為の延長かどうか?は、作業に伴う必要行為または合理的行為か?によって判断されます。