就業時間外に発生した災害が、労災と認定されることはありますか?
就業時間外の災害の労災認定の基本的な考え方
就業時間外に、労働者は業務行為を行わないのが通常です。しかし、就業時間外でも、労働者が事業主の施設管理下にある限り、事業主の支配下にあり、業務遂行性が認められます。
もっとも、業務遂行性が認められても、就業時間外は、業務行為を行っていません。そのため、業務起因性を認めることができません。
つまり、就業時間外の災害は、事業場施設の不備・欠陥等に起因する災害であることが証明されない限り、私的行為に起因するものと推定されます。したがって、業務起因性が否定され、労災と認められません。
休憩時間中の災害と労災
休憩時間中は、労働者は業務を行っていません。しかし、休憩後に就業が予定されていて、事業主の施設管理下にある限り、事業主の支配下にあり、業務遂行性が認められます。
したがって、災害が事業主の支配下にあることに起因する場合は、休憩時間中の災害でも業務起因性が認められます。ただし、事業主の管理下を離れて私用で外出した場合は、事業主の支配下を離れているため、業務起因性を認めることはできません。
なお、休憩時間中の行為の中には、就業時間中であれば業務行為に含まれると考えられる行為が存在します。たとえば、作業と関連のある各種の必要行為、合理的行為やトイレなどの生理的必要行為です。
このような行為については、休憩時間という時間の区分のみで就業中の業務付随行為と認定上区別することは合理的ではなく、かつ、業務起因性を認めることが経験則に反しない場合は、施設の欠陥等を証明しなくても、業務起因性が認められると解されています。
休憩時間中の小集団の際の災害と労災
休憩時間中に、労働者の健康維持等を目的に運動競技を行わせる会社があります。
このような活動中に生じた災害が労災となるかどうかは、集団活動の性格・目的・内容・参加が強制か任意か?など個々の事情に応じて判断されます。
事業場施設の利用中の災害と労災
事業場施設には、業務運営の用に供する敷地、建物の他に、労働者に利用させるものとして、更衣室・トイレ・洗面所・食堂など様々な施設があります。
これらの事業場施設の利用中に生じた災害は、施設の状況に起因していることが証明されれば、業務起因性が認められます。
たとえば、会社の規定に基づく業務命令によって実施した予防接種でショック死した事案は、予防接種を受けることが会社の労務管理上の必要から実施されていたので、業務行為に当たり、業務に起因することが明らかな疾病として労災と認定されています。
事業場施設内の行動中の災害と労災
始業時刻前や終業時刻後の準備や後始末など、就業していない労働者の事業場施設内を行動する際に生じた災害は、事業主が指揮監督する余地があり、その限度で業務遂行性が認められます。
したがって、事業場施設の状況に起因する災害であることが証明されれば、業務起因性が認められます。