労災認定の要件である業務起因性に関して、緊急業務中の災害を取り上げます。
緊急業務中の災害
労働者が従事する業務には、通常の業務の他に、事業場として緊急の事態が生じた場合に、緊急事態に臨んで行う緊急業務があります。
たとえば、突発事故や天災地変等に際して行う同僚の救護や事業施設の防護等その事業の労働者として行われるべき種々の活動があります。
緊急業務が事業主の命令による場合は、もちろん、命令がなくても、当該事業の労働者として行われるべきものである限り、当該行為に起因して生じた災害は、業務起因性が認めらます。
労働者が緊急事態に臨んで行う緊急行為には、当該事業に関するもの以外にも事情に応じて様々なものがあります。業務遂行性が肯定されるのは、当該事業の労働者として行われるべきもの、つまり、当該事業として労働者に期待し得るものに限られます。
緊急行為の取扱いについて(平成21年7月23日基発723第14号)
名古屋地裁平成20年9月16日判決を受けて、厚労省の通達は、以下の行為について、事業主の命令がない場合であっても当該業務に従事している労働者として行うべきものについては、業務として取扱うことを明らかにしています。
業務に従事している場合に緊急行為を行った
以下のとおり、事業主の命令の有無で取扱いが異なります。
事業主の命令がある場合
同僚労働者の救護、事業場施設の防護等当該業務に従事している労働者として行うべきものかどうかにかかわりなく、業務として取扱う。
事業主の命令がない場合
同僚労働者の救護、事業場施設の防護等当該業務に従事している労働者として行うべきものについては、業務として取扱う。
また、次の要件をすべて充足する場合は、同僚労働者の救護、事業場施設の防護等当該業務に従事している労働者として行うべきものかどうかにかかわらず、業務として取扱う。
業務として扱われる場合
①労働者が緊急行為を行った際に発生した災害が、労働者が使用されている事業の業務に従事している際に被災する蓋然性が高い災害であること
②当該災害に係る救出行為等の緊急行為を行うことが、業界団体等の行う講習の内容等から、職務上要請されていることが明らかであること
③緊急行為を行う者が付近に存在しないこと、災害が重篤であり、人の命に関わりかねない一刻を争うものであったこと、被災者から救助を求められたこと等緊急行為が必要とされると認められる状況であったこと
業務に従事していない場合に緊急行為を行った
事業主の命令の有無によって、取扱いが異なります。
事業主の命令がある場合
同僚労働者の救護、事業場施設の防護等当該業務に従事している労働者として行うべきものかどうかにかかわらず、業務として取扱う。
事業主の命令がない場合
業務に従事していない労働者が、使用されている事業の事業場又は作業場等において災害が生じている際に、業務に従事している同僚労働者等とともに、労働契約の本旨に当たる作業を開始した場合、特段の命令がないときでも、当該作業は業務に当たると推定する。