精神障害の労災認定は、業務による心理的負荷を業務による心理的負荷評価表の具体的出来事に当てはめて評価をします(心理的負荷の評価の仕方参照)。具体的な出来事の類型の③仕事の量・質を取上げます。
仕事の量・質
業務による心理的負荷評価表では、具体的な出来事の類型として仕事の量・質を挙げています。認定基準は、さらに、以下のように分類しています。
仕事内容・仕事の量の大きな変化を生じさせる出来事があった
仕事量・内容が変化するきっかけになった業務上の事柄を出来事として捉える項目です。人事異動を伴わずに、仕事内容・量が変化した場合を想定しています。
しかし、転勤・配置転換や仕事上のミスや新規事業の担当となったことで仕事内容・量が変化する場合を除外していません。この場合、1つの状況を2つの視点から評価し、いずれかの出来事で心理的負荷の強度を「強」と評価できれば、総合評価も「強」となります。いずれかの出来事も「強」にならない場合は、原則、最小の出来事を具体的出来事として、仕事内容・仕事量の変化は、出来事後の状況として、全体の総合評価を行います。
平均的な心理的負荷の強度はⅡとされています。業務の困難性、能力・経験と業務内容のギャップ、時間外労働・休日労働、業務の密度の変化、仕事内容、責任の変化の程度等により心理的負荷の総合評価を行います。
想定しているのは、時間外労働時間数がおおむね20時間以上増加し、1か月当たりおおむね45時間以上となるような変化です。発病前6か月において時間外労働時間数に変化が見られる場合、他の項目で評価される場合もこの項目で評価されます。
時間外労働時間数が倍以上に増加し、1か月当たりおおむね100時間以上となるような状況になり、業務に多大な労力を費やした場合は、心理的負荷の強度は「強」とされます。
1か月に80時間以上の時間外労働を行った
平均的な心理的負荷の強度はⅡとされています。業務の困難性、長時間労働の継続期間により心理的負荷の総合評価を行います。
以下の場合、心理的負荷の強度は、「強」とされます。
心理的負荷の評価が「強」になる例
①発病前の連続した2か月間に1か月当たりおおむね120時間以上の時間外労働を行い、その業務内容が通常その程度の労働時間が必要なもの
②発病前の連続した3か月間に1か月当たりおおむね100時間以上の時間外労働を行い、その業務内容が通常その程度の労働時間が必要なもの
上記の「仕事内容・量の大きな変化を生じさせる出来事があった」で、仕事量の変化について評価している場合は、労働時間の二重評価となるので、この項目での評価は行いません。
2週間以上にわたって連続勤務を行った
平均的な心理的負荷の強度はⅡとされています。業務の困難性、能力・経験と業務内容のギャップ、時間外労働・休日労働、業務の密度の変化、仕事内容、責任の変化の程度等により心理的負荷の総合評価を行います。
平日の時間外労働だけではこなせない業務量がある、休日に対応しなければならない業務が生じた等の理由で2週間(12日)以上連続勤務を行った場合を想定しています。ただし、1日の労働時間が特に短い場合、手待ち時間が多く労働密度が特に低い場合は除外されます。
1か月以上にわたり連続勤務を行った場合、2週間以上にわたり連続勤務を行いその間、連日、深夜時間帯に及ぶ時間外労働を行った場合は心理的負荷の強度は「強」となります。
2週間以上にわたって休日のない連続勤務を行ったことにより、1か月の時間外労働時間数が、前月から大きく増加した場合は、「仕事内容・量の大きな変化を生じさせる出来事があった」でも評価します。
また、仕事量の変化が大きな変化とまでは言えないが、1か月に80時間以上の時間外労働を行った場合は、「1か月に80時間以上の時間外労働を行った」でも評価します。
上記のように、複数の出来事で評価を行う場合、それぞれの心理的負荷の強度が「中」の場合、通常、これらは、関連する出来事なので、単に近接・重複しているという理由のみで、「強」と評価されることはありません。