安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求の主張・立証責任について判断した最高裁判決を紹介します。
航空自衛隊芦屋分遣隊事件(最高裁昭和56年2月16日判決)
国の国家公務員に対する安全配慮義務違反を理由とする損害賠償請求の事案です。
安全配慮義務違反の事実に関する主張・立証責任が、問題となりました。つまり、この判決では、安全配慮義務違反を理由に損害賠償請求をする被害者は、何をどこまで主張・立証しなければならないのか?が問題になりました。
最高裁の判断
最高裁は、安全配慮義務違反に基づく損賠賠償請求において、被害者側は、①義務違反の内容と②①の義務の不履行を主張立証しなければならないと判断しました。
国が国家公務員に対して負担する安全配慮義務に違反し、当該公務員の生命、健康等を侵害し、同人に損害を与えたことを理由として損害賠償を請求する訴訟において、当該義務の内容を特定し、かつ、義務違反に該当する事実を主張・立証する責任は、国の義務違反を主張する原告にある、と解するのが相当である。
本件記録及び原判決の判文によれば、上告人らはこの法理に従って国の負担する具体的な安全配慮義務の内容及び同義務に違反する事実について主張をし、原審もまた、本件事故の原因を確定したうえ、この法理に従って、被上告人が本件のようなヘリコプターに搭乗して人員及び物資輸送の任務に従事する自衛隊員に対してヘリコプターの飛行の安全を保持し危険を防止するためにとるべき措置として、ヘリコプターの各部部品の性能を保持し機体の整備を完全にする義務のあることを明らかにし、この見地から、上告人らの主張に基づき、被上告人につき具体的に義務違反の事実の存否を判断し、その存在を肯認することができないとしたものであることが明らかである。したがって、原判決には所論立証責任の法則を誤った違法があるとは認められない。