労災の業務上疾病の内、業務上の負傷に起因する疾病の労災認定基準を取上げます。
業務上の負傷に起因する疾病
労基法施行規則は、業務上の負傷に起因する疾病を業務上疾病として、例示列挙しています(別表第1の第2号1)。
業務上の負傷に起因する疾病は、業務上の負傷と相当因果のある疾病のことです。業務上疾病の中では、最も多い疾病です。
①業務上の負傷が原因となって第一次的に発生した原疾患と、②原疾患に引続き発生した続発性の疾病、③その他原疾患との間に相当因果が認められる疾病が含まれます。
負傷
負傷は、医学用語ではありません。労災保険では、医学用語である損傷等に準じる概念として用いられています。
その損傷とは、外力によって正常な組織の連続性が断たれた状態と定義されています。
一般的認定要件
業務上の負傷と疾病との間に相当因果があると認められるには、一般的に、次の要件を充足する必要があります。
負傷直後の身体の損傷若しくは症状と発生した疾病との間に、部位的、機能的に医学上の関連性が認められる
受傷部位と発症部位は、通常は一致します。しかし、神経系を介して反射性に症状の発現が見られる場合等は、受傷部位と発症部位が一致しないことがあります。たとえば、頭部外傷により眼に障害が発症するような場合です。
負傷部位と発症部位が異なる場合は、主治医が初診時に身体的所見を把握しておくとともに症状経過を明確にしておくことが、相当因果関係の存否の判断に必要とされています。
疾病の種類が負傷の態様、性質からみて医学的に妥当であること
負傷が疾病発生の原因とするに足りるだけの強度を有していることも必要とされます。
たとえば、頭部外傷による精神・神経障害の場合、原因となる脳損傷の存在が前提になります。
負傷と疾病発生の間に時間的にみて医学上その因果関係の存在を認めるに足りるものである
たとえば、頭部外傷による脳血管疾患の場合は、通常、負傷後24時間以内に症状が出現するとされています。脳出血は、症状の出現までに数日経過する場合もあります。また、慢性硬膜下血腫は負傷後、数週間から週か月経過して発症することがあります。
医学的診断要件
一般的認定要件の他に、医学上の診断確定のために以下のような医学的診断要件が必要となります。
医学的診断要件
災害原因の内容・負傷の状態の把握、年齢・性別、既往症、家族歴、現在までの症状経過、各種の検査