労災の業務上疾病の内、二硫化炭素による疾病の労災認定基準を取上げます。
二硫化炭素による疾病の認定基準について(昭和51年1月30日基発第58号)
二硫化炭素(CS2)のばく露する作業に従事した労働者が発症した疾病は、この認定基準に従って、労災認定が行われます。
認定基準
相当量のCS2を取り扱い、または、その蒸気に相当期間に亘って繰り返しさらされる業務に従事しているか又は従事した経歴を持つ労働者が、次の各号のいずれかに該当する症状を呈し、医学上療養が必要であると認められ、かつ、CS2以外の原因により発病したものでないと判断されたものは労災と認定されます。
また、業務により大量もしくは濃厚なCS2蒸気にさらされて、意識障害等の急性中毒症状を呈した場合も労災と認定されます。
二硫化炭素による疾病が労災と認定される要件
(1)相当の濃度のCS2蒸気にさらされる業務に長期間従事した労働者に、CS2によると考えられる腎障害およびCS2性網膜症を認めた場合、またはCS2によると考えられる脳血管障害およびCS2性網膜症を認めた場合
(2)比較的高濃度のCS2蒸気にさらされる業務に数か月ないし数年従事しているか、またはその業務を離れた後、おおむね6か月未満の労働者が次の症状のいずれかを呈した場合
①多発神経炎
②視神経炎
③貧血及び肝機能障害
(3)高濃度のCS2蒸気にさらされる危険のある業務に、数週ないし数ヵ月従事している労働者が、突然あるいは若干の初発症状をともない、意識混濁・せん妄・精神分裂病様症状・躁うつ病様症状等の精神異常を呈した場合
CS2の濃度
認定基準がいう相当濃度とは、10数ppm以上の濃度を意味しています。そして、比較的高濃度とは、数十ppm以上の濃度を意味します。また、高濃度とは、100ppm以上の濃度を意味します。
濃厚なCS2ばく露とは、1,000ppm程度のCS2蒸気に数分ないし数時間のばく露することを意味します。
長期間従事
長期間とは、20~30年程度のCS2現場歴を意味します。なお、比較的高濃度のばく露の機会がしばしばあった場合、より短期間で発症することもあるとされています。