精神障害の労災とパワハラ
精神障害の労災認定に関して、パワハラを取り上げます。
パワハラ
精神障害の労災の傾向として、職場の人間関係を理由とした労災請求が増加しています(平成29年度精神障害の労災補償状況も参照)。
2012年に、職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループの報告がまとめられています。
同報告では、パワハラを「職場のパワーハラスメント」と呼び、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える職場環境を悪化させる行為と定義しています。
また、上司から部下だけでなく、先輩と後輩の間、同僚間、部下から上司に対してもパワハラになる可能性があります。
パワハラの行為類型
パワハラの行為類型として,以下の6つが挙げられています。
身体的な攻撃
暴行や脅迫
精神的な攻撃
脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言
人間関係からの切り離し
隔離・仲間外れ・無視
過大な要求
職務上明らかに不要なことや遂行可能なことの強制や仕事の妨害
過小な要求
業務上の合理性がなく,能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じられること・仕事を与えないこと
個の侵害
私的なことに過度に立ち入ること
パワハラの判断基準
特に,上司から部下へのパワハラが,業務の適正な範囲を超えたものか?が問題になります。
当該行為のなされた状況,行為者の意図,当該行為の態様,行為者の職務上の地位・年齢,両者のそれまでの関係,当該行為の行われた場所,当該行為の反復・継続性,被害者の対応,他者との共謀関係等を総合考慮し,社会通念上不相当とされる程度の者である場合は,人格権を侵害するものとして違法になると考えられます。
パワハラと労災
精神障害の労災において,パワハラは,具体的出来事の①ひどい嫌がらせ・いじめ又は暴行を受けた,②上司とのトラブル,③同僚とのトラブル,④部下とのトラブルに該当することになります。
その心理的負荷の評価は,以下のような点を総合考慮して判断されます。
(1)パワハラの言動自体のひどさ,厳しさ
(2)パワハラが行われた状況
(3)パワハラが行われた後の業務に支障が生じたかどうか
(4)パワハラが反復・継続したり,執拗に繰り返されたかどうか
精神障害の認定基準の改定
精神障害の労災認定基準が改定され,パワハラが具体的出来事として明記されました(パワハラによる精神障害の労災認定参照)。もっとも,判断基準に変更があるわけではありません。