業務上の負傷に対する輸血後に生じる慢性肝炎等の労災認定基準

業務上の負傷に対する輸血後に生じる慢性肝炎等の労災認定基準を取り上げます。

業務上の負傷に対する輸血後に生じる慢性肝炎等

 業務上の負傷が、第一義的原因で肝がん等を発症することはありません。しかし、業務上の負傷に対する治療目的で行われた輸血等が原因で、ウィルス肝炎にり患し、慢性肝炎・肝硬変を経て肝細胞がんに至ることがあります。

 このような肝炎等は、業務上の事由による負傷が原因で発症に至った進展過程が医学上説明できるので、業務上疾病として取り扱われます。

 ウィルス肝炎は、A型・B型・C型・D型・E型などに分類されます。①血液を介して感染すること、②慢性の経過をとることを考慮し、B型肝炎及びC型肝炎並びにこれらの肝炎による肝細胞がんが、業務上の負傷に対する輸血により、業務上の疾病として発病する可能性を有していると考えられます。

 なお、ウィルス肝炎が肝硬変を経て肝細胞がんに進展することは、その発がん機序は必ずしも明らかではないが、因果関係が存在することは認められるとされています。

業務上外の判断

 業務上の負傷に対する輸血後に生じる慢性肝炎等の労災認定については,業務上の負傷を前提に,必要な臨床生理,臨床化学,腹部画像,病理学的諸検査を行い,それらに基づき以下の点に留意することとされています。

 (1)B型又はC型のウィルス肝炎にり患したことが明らかであること

 (2)原発性の肝細胞がんであること

 (3)肝炎のり患から肝細胞がん発生までの期間が医学的にみて合理的であること(十数年~30年までが多い)