同じ労災保険でも業務上災害と通勤災害で、何か違いはありますか?
業務上災害と通勤災害
労災保険の給付の対象となるのは、業務上災害と通勤災害の2つです。労災保険の給付に関して、業務上災害と通勤災害では、ほぼ同じ内容の給付を受けることができます。
ただし、労基法の災害補償では、通勤災害は補償されません。
その他にも、業務上災害と通勤災害には、次のような違いがあります。
労災保険給付の名称が違う
形式的なことですが、業務上災害と通勤災害では労災給付の名称が違います。たとえば、業務上災害では、療養補償給付・休業補償給付・障害補償給付です(労災保険法12条の8)。通勤災害では、療養給付・休業給付・障害給付と、使用者の補償責任を意味する「補償」という文言が付きません(労災保険法21条)。
療養給付において一部負担金を徴収できる
通勤災害では、療養給付に関して、200円を超えない範囲で一部負担金を徴収することが認められています(労災保険法31条2項)。ただし、交通事故のような第三者行為など一部負担金を徴収できない場合もあります(労災保険規則44条の2第1項)。
通勤災害では待期期間中の休業補償はない
休業(補償)給付は、3日間の待期期間があります(労災保険法14条1項)。
※休業(補償)給付も参照
業務上災害では、労基法の災害補償に基づき使用者から待期期間中の休業補償が支払われますが、通勤災害では支払われません。
通勤災害には解雇制限がない
業務上災害で休業している場合、労基法19条の解雇制限により、使用者は労働者を解雇することができません。
※労災と解雇制限も参照
一方、通勤災害で休業している場合は、労基法19条の解雇制限の適用はありません。
業務上災害か通勤災害かの区別が重要
このように、業務上災害と通勤災害では、労災保険の給付内容で違いはないものの、労基法の災害補償と解雇制限の関係で、業務上災害の方が労働者に有利になっています。
災害時に業務遂行性、つまり、使用者の支配・管理下にあれば、業務災害と認定されます。たとえば、使用者が手配したマイクロバスで作業現場に向かう場合、会社のマイクロバスに乗車した時点で単なる通勤ではなく、使用者の支配・管理下に入ったと認められます。その途中で発生した災害は、業務上災害と認められます。
その他に、緊急的業務による休日出勤、早出出勤の際に起きた災害など特別の事情によって、業務遂行性を肯定することができる場合があります。