労災保険の各種給付の基礎となる給付基礎日額の算定期間を取上げます。
給付基礎日額
労災保険の給付のほとんどは、給付基礎日額を基礎に支給されます。たとえば、休業(補償)給付は、給付基礎日額の60%が支給されます。障害(補償)給付は、後遺障害の等級に応じて、給付基礎日額の何日分という形で支給されます。
給付基礎日額の概要は、以前に取上げました。
給付基礎日額の概要は、以下の記事参照
給付基礎日額(労災保険の基礎)
労災保険の休業補償給付、障害補償給付、遺族補償給付など各種の給付は、給付基礎日額を基に金額が算出されます。労災の給付の基礎である給付基礎日額を解説します。
今回は、給付基礎日額の算定期間を取上げます。
給付基礎日額の原則は、平均賃金
給付基礎日額は、原則、算定すべき事由の発生した日の直前3か月間の総賃金を日割計算した平均賃金(労災保険法8条1項、労基法12条1項)です。
したがって、労災事故発生前の3か月の平均賃金を基礎に、給付基礎日額を算定します。
算定事由の発生した日
業務上災害、通勤災害等による負傷・死亡の原因となる事故が発生した日、又は診断によって業務上災害・通勤災害による疾病の発生が確定した日が、算定事由の発生した日です。
直前3か月間
上記の算定事由が発生した日の前日から遡って3か月間です。
労災保険法の文言上は、「以前3箇月間」なので、算定事由の発生した日を含みそうです。しかし、算定事由の発生した日は、労災事故が発生した日です。被災労働者は労務提供を行っておらず、賃金が支払われないことが多いので、平均賃金の算定から除外することになっています。
3か月とは、90日ではありません。暦日による3か月です。たとえば、6月10日に算定事由が発生した場合は、6月9日~3月10日の92日で算定します。
したがって、算定事由の発生日によっては、89日になることも92日になることもあります。
賃金締切日がある場合
平均賃金は、算定事由の発生日の直前3か月間の賃金総額と総日数によって算定します。通常、会社には賃金の締切日が存在します。賃金締切日がある場合は、算定事由の発生日の直前の賃金締切日から起算します。
つまり、直前の賃金締切日から三賃金締切期間で平均賃金を算定します。
なお、算定事由の発生日が賃金締切日である場合も直前の賃金締切日から3か月間で平均賃金を算定します。
除外する期間
3か月の期間中に、以下の期間がある場合は、算定から除外します(労基法12条3項)。
平均賃金の算定において除外する期間
①業務上の傷病による休業期間
②産前産後の休業期間
③使用者の帰責事由による休業期間
④育児休業、介護休業期間
⑤試用期間
これらの期間を除外した場合は、残りの期間の日数によって平均賃金を算定します。
除外期間が3か月以上に及ぶ場合は、平均賃金を算定する期間が存在しなくなります。この場合は、都道府県労働局長が決めることになっています(労基法施行規則4条前段)。
入社後3か月未満の労働者
入社して3か月未満の労働者について、労災事故が発生した場合、算定事由の発生日の直前3か月間の平均賃金を算定できません。
したがって、入社後の期間とその期間中の賃金の総額で平均賃金を算定することになっています。なお、賃金の締切日がある場合は、直前の賃金締切日から起算されます。