労災の業務上疾病の内、アスベスト(石綿)による疾病の労災認定を取上げます。
アスベストによる疾病
アスベスト(石綿)は、繊維状の耐熱性、耐摩耗性にすぐれた鉱物性物質です。
アスベストの種類
①クリソタイル(白石綿、温石綿)
②クロシドライト(青石綿)
③アモサイト(茶石綿)
④トレモライト
⑤アクチノライト
⑥アンソフィライト
アスベストは耐火・断熱材として、建築物を中心に大量に使用されていました。しかし、アスベストに発がん性があることが判明し、労働安全衛生法施行規則が改正され、アスベストを重量の0.1%を超えて含有する全ての物の製造・輸入・譲渡・提供・使用が禁止されています。
主なアスベスト含有製品
①建材
②摩擦材
③接着剤
④耐熱版
⑤電気遮断版
⑥シール材
しかし、禁止措置が遅れたことで、建設労働者を中心にアスベストに被曝した労働者が、アスベストによる疾病にり患する事案が増加しています。
業務上疾病としてのアスベストによる疾病
労基法施行規則は、以下の3つのアスベストによる疾病を業務上疾病として例示列挙しています。
業務上疾病として例示列挙されているアスベストによる疾病
①石綿にさらされる業務による良性石綿胸水又はびまん性胸膜肥厚(別表1の2第4号7)
②粉じんを飛散する場所における業務によるじん肺症又はじん肺法に規定するじん肺と合併したじん肺法施行規則第一条各号に掲げる疾病(別表第1の2第5号)
③石綿にさらされる業務による肺がん又は中皮腫(別表第1の2第7号8)

それぞれの詳細は、以下の各記事参照
石綿にさらされる業務による良性石綿胸水又はびまん性胸膜肥厚の労災認定
アスベストによる疾病の内、石綿にさらされる業務による良性石綿胸水又はびまん性胸膜肥厚の労災認定を解説します。
石綿による疾病の認定基準につて(平成24年3月29日基発329第2号)
アスベストによる疾病の労災認定基準は、対象疾病ごとに、認定基準を定めています。
アスベストによる疾病の種類
認定基準が定めるアスベストによる疾病は、以下の5つです。
労災認定基準におけるアスベストによる疾病の種類
①石綿肺
②肺がん
③中皮腫
④良性石綿胸水
⑤びまん性胸膜肥厚
石綿ばく露作業
認定基準は、アスベストに被曝したと考えられる作業を石綿ばく露作業と定義し、次のように分類しています。
そして、石綿ばく露作業に従事しているか、過去に従事していた労働者を石綿ばく露労働者と定義しています。
石綿ばく露作業
(1)石綿鉱山又はその附属施設において行う石綿を含有する鉱石又は岩石の採掘、搬出又は粉砕その他石綿の精製に関連する作業
(2)倉庫内等における石綿原料等の袋詰め又は運搬作業
(3) 以下に掲げる石綿製品の製造工程における作業
①石綿糸、石綿布等の石綿紡織製品
②石綿セメント又はこれを原料として製造される石綿スレート、石綿高圧管、石綿円筒等のセメント製品
③ボイラーの被覆、船舶用隔壁のライニング、内燃機関のジョイントシーリング、ガスケット(パッキング)等に用いられる耐熱性石綿製品
④自動車、捲揚機等のブレーキライニング等の耐摩耗性石綿製品
⑤電気絶縁性、保温性、耐酸性等の性質を有する石綿紙、石綿フェルト等の石綿製品(電線絶縁紙、保温材、耐酸建材等に用いられている。)又は電解隔膜、タイル、プラスター等の充填剤、塗料等の石綿を含有する製品
(4) 石綿の吹付け作業
(5) 耐熱性の石綿製品を用いて行う断熱若しくは保温のための被覆又はその補修作業
(6) 石綿製品の切断等の加工作業
(7) 石綿製品が被覆材又は建材として用いられている建物、その附属施設等の補修又は解体作業
(8) 石綿製品が用いられている船舶又は車両の補修又は解体作業
(9) 石綿を不純物として含有する鉱物(タルク(滑石)等)等の取扱い作業
(10) (1)から(9)までに掲げるもののほか、これらの作業と同程度以上に石綿粉じんのばく露を受ける作業
(11) (1)から(10)までの作業の周辺等において、間接的なばく露を受ける作業