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墜落事故と安全配慮義務②(労災の損害賠償)


墜落事故に関して、安全配慮義務違反が認められた裁判例を紹介します。

藤島建設事件(浦和地裁平成8年3月22日判決)

 3メートルの高所での木工事中に地上に転落した墜落事故です。使用者の安全配慮義務違反が認められた判決です。

事案の概要

 原告は、平成2年2月5日午前11時30分から45分までのころ、本件現場一階屋根の上において、一階屋根の垂木に破風板を打ち付ける作業に従事していた。その際、外回りの足場が設置されていなかった(なお、外回りの足場に代わる防網や安全帯も、設置ないし準備されていなかった。)ことから、地上約3メートルの一階の屋根部分に上がり、片足はけたに、もう一方の足は垂木にそれぞれ乗せた(野地板は、まだ張られていなかった。)上、前かがみの姿勢で垂木の先端部(けたよりも約45センチメートル突き出ていた。)をのぞき込みつつ、長さ約3メートル60センチメートル、幅約21センチメートルの板である破風板を片手で持ちながら、くぎで垂木に破風板を打ち付けることとなった。その際、垂木やけたはまだ濡れていた。
 原告は、まず、破風板の中央部分を垂木にくぎで打ち付け、次に、隣の垂木にもくぎで打ち付け、更に三本目の垂木にくぎで打ち付けようとして破風板に片足をかけた瞬間、くぎが抜けたため、姿勢を崩して地面に墜落した。

 一階の屋根部分の垂木に破風板を打ち付ける作業は、外回りの足場がある場合には、足場に乗って下方から上方に向かう姿勢で行うことが可能であった。もっとも、外回りの足場がない場合においても、脚立を使用することにより、屋根の上に上がって前かがみの姿勢にならなくても、一階の屋根部分の垂木に破風板を打ち付けることが可能ではあり、脚立は、大工であれば通常携行している道具であった。なお、足場が実際に組み立てられたのは、平成2年2月10日であった。

裁判所の判断

 裁判所は、以下のように、安全配慮義務違反を認めました。

 被告は、原告を高さ約3メートル以上の高所において木工事の作業に従事させており、原告が高所から墜落する危険のあることは容易に予見することができたものと認められるから、本件事故の当時、安全配慮義務の履行として、外回りの足場、防網などの墜落を防止するための設備を本件現場に設置するとともに、当該設備が設置されていない場合には、原告に対し、高所における作業に従事することを禁止するなど墜落による危険を防止するための措置を講ずべき義務があったものというべきである。

 被告の現場監督のBは、原告との間で、木工事の日程について確認をしていたこと、Bは、平成2年2月3日ころ、原告が既に二階の屋根工事をおおむね終了していることを知ったこと、原告は、Bに対し、同月5日朝、外回りの足場のないまま、晴れ間を見て作業に従事することを告げたことが認められ、被告は、同日、原告が外回りの足場が設置されていない状況の下で一階の屋根工事に従事することを十分予見することができたというべきである。
 しかるに、被告は、原告に対し、足場その他の墜落を防止するための設備のないまま高所における作業に従事することを禁止することなく、原告が地上約3メートルの高所において作業に従事することを漫然と黙認したものであって、その安全配慮義務違反は明らかであるといわざるを得ない。


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