安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求の場合,遺族固有の慰謝料を請求することができないと判断した最高裁判決を紹介します。

大石塗装・鹿島建設事件(最高裁昭和55年12月18日判決)

 労働災害の被害にあった労働者が死亡した場合,労働者の遺族が,使用者の責任を追及するには,①不法行為に基づく損害賠償請求と②安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求の2つの法律構成があります。

 ②安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求において,遺族固有の慰謝料を請求できないと判断した判決です。また,遅延損害金の起算日についても判断しています。

最高裁の判断

 (1)遺族固有の慰謝料について

 上告人らは子であるAを失ったことによる精神的苦痛に対する慰藉料の支払を求め,原審は上告人ら各自につき50万円の限度でこれを認容しているが,Aと被上告人らとの間の雇傭契約ないしこれに準ずる法律関係の当事者でない上告人らが雇傭契約ないしこれに準ずる法律関係上の債務不履行により固有の慰藉料請求権を取得するものとは解しがたいから,上告人らは慰藉料請求権を取得しなかったものというべきである。

 (2)遅延損害金の起算日について

 債務不履行に基づく損害賠償債務は期限の定めのない債務であり,民法412条3項によりその債務者は債権者からの履行の請求を受けた時にはじめて遅滞に陥るものというべきであるから,債務不履行に基づく損害賠償請求についても本件事故発生の翌日である昭和43年1月23日以降の遅延損害金の支払を求めている上告人らの請求中遅滞の生じた日以前の分については理由がないというほかはないが,その後の分については,損害賠償請求の一部を認容する以上,その認容の限度で遅延損害金請求をも認容すべきは当然である。

 記録に徴すれば,原判決の認容した債務不履行に基づく損害賠償請求は,上告人ら代理人の提出の昭和48年11月26日付準備書面に基づいて始めて主張されたものであるところ,同準備書面は同日第一審裁判所に提出されるとともに法廷において被上告人ら代理人に交付されたことが明らかである。したがって,被上告人らは同日限り損害賠償債務について遅滞に陥ったものというべきであり,上告人らは,被上告人らに対し,その翌日である昭和48年11月27日以降支払ずみに至るまでの民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求めうべきものといわなければならない。