労災保険のアフターケア制度を取上げます。
労災では症状固定後の治療費は支給されない
労働者が労働災害によって負傷等した場合、労災保険から治療費が支給されます(労災保険法13条)。
労災保険での治療費の支給は、症状固定(治ゆ)までです。症状固定後は、有効な治療をすることができないというのがその理由です。
しかし、一定の重い傷病の中には、症状固定後でも治療が必要な場合があります。そのような場合に対応する制度が、労災保険にあります。
労災のアフターケア制度
一定の重い傷病について、労災保険は、社会復帰等促進事業の一環として、アフターケア制度を設けています(労災保険法29条1項1号、労災保険規則24条・28条)。
アフターケア制度によって、症状固定後も治療費の支払を受けることができます。
アフターケア制度の対象
アフターケア制度の対象となる傷病は、以下の20傷病です。
アフターケア制度の対象
①脊髄損傷
②頭頸部外傷症候群等
③尿路系障害
④慢性肝炎
⑤白内障等の眼疾患
⑥振動障害
⑦大腿骨頸部骨折・股関節脱臼・股関節脱臼骨折
⑧人工関節・人口骨頭置換
⑨慢性化膿性髄炎
⑩虚血性心疾患等
⑪尿路系腫瘍
⑫脳の器質性障害
⑬外傷による抹消神経損傷
⑭熱傷
⑮サリン中毒
⑯精神障害
⑰循環器障害
⑱呼吸機能障害
⑲消火器障害
⑳炭鉱災害による一酸化炭素中毒
上記の各傷病ごとに、対象者が定められています。たとえば、①脊髄損傷の場合は、障害等級3級以上の障害(補償)給付を受けている人又は受けると見込まれる人です。また、障害等級4級以下の障害(補償)給付を受けている人で医学的に特に必要があると認められる場合は、アフターケア制度の対象になります。
アフターケア制度の補償内容
アフターケア制度による補償を受けるには、症状固定後に、事業場の所在地の都道府県の労働局長に対して、健康管理手帳交付申請を行います。申請が認められると、アフターケア健康管理手帳が交付されます。
アフターケア健康管理手帳を労災指定病院で提示すると、診察・保健指導・処置・検査を無料で受けることができます。また、一定の要件を充足すれば、通院費も支給されます。