労災保険の業務上疾病のうち、酸素欠乏症の労災認定を取上げます。
業務上疾病としての酸素欠乏症
空気中の酸素濃度の低い場所における業務による酸素欠乏症が、労災の業務上疾病として、例示列挙されています(労基法施行規則別表第1の2第4号8)。
酸素欠乏症
酸素欠乏症は、体組織、特に、脳神経細胞に酸素不足を来した結果起こる疾病です。
軽度の場合は、頻脈、精神障害、呼吸促迫、血圧上昇、チアノーゼ等の症状がみられます。
高度になると、意識不明、痙攣、血圧下降等がみられ、放置すると、死に至ります。
酸素欠乏症の症状が現れる酸素濃度には個人差及びその健康状態が大きく作用します。一般には、16%から自覚症状が現れ、低濃度になるほど症状は重くなります。10%以下では、死の危険が生じます。
酸素欠乏症が発生しやすい職場
マンホール、発酵タンク、穀物サイロ、井戸、基礎抗、トンネル等の換気の悪い場所では、微生物の呼吸や土中の鉄の酸化等により、酸素濃度が低下しやすい場所です。
また、船舶タンク、ボイラー等の密閉された鉄の構造物は、鉄さびが発生すると、内部の酸素濃度が低下します。
爆発・火災の危険性の高い製品や空気と接触すると酸化・劣化を起こす不安定な物質を取扱う業務があります。このような業務では、大量の不燃性ガスが貯蔵タンク・製造設備内の空気の置換に用いられています。また、工業製品・農産物等でも、品質向上・流通コスト低下・腐食防止等のために、不燃性ガスを利用することがあります。取扱いや作業を誤ると、酸素欠乏症が発生するおそれがあります。
酸素欠乏症は、上記のような換気の悪い場所で発生します。まれに、通風のいい屋外でも配管等からのガスの噴出時、エアラインマスク装着者の誤接続による不燃性ガスの送給等により、酸素欠乏症が発生することがあります。
酸素欠乏症等防止規則
酸素欠乏症防止規則の規制対象として、労働安全衛生法施行令別表第6で、酸素欠乏危険場所が規定されています。
労災の認定
酸素欠乏症は、酸素欠乏空気にさらされることで、急性に発症します。したがって、酸素欠乏空気の存在、漏出等によるばく露の事実を確認することが重要です。
上記に加えて、臨床症状を把握することで、労災の認定が行われます。
なお、酸素欠乏危険場所に該当する場所で、転倒し意識不明となった場合、他に原因があることも考えられます。たとえば、硫化水素その他の化学物質への高濃度ばく露、脳血管疾患・虚血性心疾患、感電等の可能性が考えられます。したがって、十分な事実確認と的確な診断による鑑別が必要です。