アスベストによる疾病の労災認定基準②
アスベスト(石綿)による疾病の労災認定基準のうち、疾病ごとの認定基準を取上げます(アスベストによる疾病の労災認定基準も参照)。
石綿による疾病の認定基準につて(平成24年3月29日基発329第2号)
アスベストによる疾病の認定基準は、対象疾病ごとに認定基準を定めています。認定基準のポイントは、①石綿ばく露作業に従事した期間と作業実態と②病状の進行状態です。
石綿肺
石綿ばく露労働者に発生した疾病で,じん肺法に規定するじん肺管理区分に基づいて,以下の①と②のいずれかに該当する場合,労災と認定されます。
①管理区分4の石綿肺(石綿肺によるじん肺症)
②管理区分2・3・4の石綿肺に合併した疾病
②に該当する疾病としては,肺結核・結核性胸膜炎・続発性気管支炎・続発性気管支炎拡張症・続発性気胸があります。
肺がん
石綿ばく露労働者に発生した原発性肺がんで,以下の①~⑥のいずれかに該当する場合,労災と認定されます。ただし,最初の石綿ばく露作業を開始してから10年未満で発症したものは労災と認定されません。
①石綿肺所見がある
②胸膜プラーク所見があり,石綿ばく露作業従事時間10年以上
③広範囲の胸膜プラーク所見があり,石綿ばく露作業従事期間1年以上
④石綿小体又は石綿線維の所見があり,石綿ばく露作業従事期間1年以上
⑤びまん性胸膜肥厚に併発
⑥以下の特定の3作業に従事し,石綿ばく露作業従事期間5年以上
石綿紡織製品製造作業,石綿セメント製品製造作業,石綿吹付作業
中皮腫
石綿ばく露労働者に発症した胸膜,腹膜,心膜又は精巣鞘膜の中皮腫で,じん肺法に定める胸部X線写真の像の区分又は石綿ばく露作業従事時間が以下の①,②の場合,労災と認定されます。ただし,最初の石綿ばく露作業を開始してから10年未満で発症したものは除外されます。
①胸部X線写真で第1型以上の石綿肺所見がある
②石綿ばく露作業従事期間1年以上
良性石綿胸水
胸水はアスベスト以外に様々な原因で発症します。良性石綿胸水の診断は,アスベスト以外の胸水の原因をすべて除外することで行われます。
したがって,診断が非常に困難なため,労基署長が厚労省本省と協議した上で,労災かどうかを判断することとされています。
びまん性胸膜肥厚
石綿ばく露労働者に発生したびまん性胸膜肥厚で,肥厚の広がりが以下の一定基準に達し,著しい呼吸困難を伴うもので,石綿ばく露作業従事期間が3年以上ある場合,労災と認定されます。
胸部CT画像上,片側のみ肥厚がある場合は側胸壁の2分の1以上,両側に肥厚がある場合は側胸壁の4分の1以上