労災の業務上疾病の内、一酸化炭素による疾病の労災認定を取上げます。
一酸化炭素による疾病
労基法施行規則別表第1の2第4号第1は、業務上疾病として、「厚生労働大臣の指定する単体たる化学物質及び化合物(合金を含む。)にさらされる業務による疾病であって、厚生労働大臣が定めるもの」を例示列挙しています。
同規定による厚生労働大臣の定めは、厚生労働省告示の「労働基準法施行規則の規定に基づく厚生労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物(合金を含む。)並びに厚生労働大臣が定める疾病」に規定されています。
一酸化炭素による疾病は、告示に規定されています。
一酸化炭素による疾病の労災認定
一酸化炭素による疾病である急性中毒の労災認定は、業務による一酸化炭素への大量のばく露の事実確認と医学的診断により行われます。
一酸化炭素へのばく露は、血液中の一酸化炭素ヘモグロビン濃度の検査より裏付けられます。
医学的検査として、以下のような検査が考えられます。
医学的検査の例
①顔貌、脈派、血圧等の全身状態の検査
②意識状態の検査
③頭痛、めまい、吐き気等の自覚症状の有無の検査
④腱反射異常の有無の検査
⑤運動障害等の神経障害の有無の検査
⑥視野、暗転の検査
⑦聴力検査
⑧精神医学的検査
⑨脳波検査
⑩心電図検査
都市ガス配管工にかかる一酸化炭素中毒の認定基準について(昭和43年2月26日基発第646号)
都市ガス配管業務に従事している労働者に発症した一酸化炭素中毒は、この認定基準に従って、労災認定が行われます。
認定基準
都市ガス配管業務に従事している労働者が、以下の3つの全てを充足する場合は、労災と認定されます。
労災と認定される要件
①その業務の遂行中に、相当量の一酸化炭素に繰り返しばく露された
②以下の該当する症状を呈している
③その症状が他の疾病に起因するものでない
症状
精神症状として、人格水準の低下(気楽・不関・芯がない・あき易い等の人格変化)・記銘力障害・記憶力障害等が認められ、かつ、以下のいずれかに該当する症状が認められるものが、労災と認定されます。
労災と認められる症状
(1)気脳写により脳室拡大が認められるもの。
(2)病的な平担脳波、又は徐波が認められるもの。
(3)視野障害(狭窄又は中心暗点)が認められるもの。
(4)前庭機能障害が認められるもの。
(5)以下の①から⑨の症状のうち、いくつかが認められるもの。
①著しい頭痛・めまい・疲労感等の自覚症状で、いずれもがん固なもの。
②自律神経障害
③腱射反減弱
④筋の易疲労性
⑤平衡障害
⑥共同運動障害
⑦聴力障害・耳鳴
⑧マリオット暗点の拡大
⑨前記(2)以外の脳波異常
労災認定の留意点
都市ガス配管工にかかる一酸化炭素中毒の労災認定に当たっては、以下の点に留意することとされています。
都市ガス配管工にかかる一酸化炭素中毒の労災認定の留意点
(1)労働者の年齢、職歴、症状発生の時期と経過、とくに、都市ガスの吸入に因る意識混濁又は消失症の有無を参考にすること。
(2)類似の症状を呈する他の原因に基づく疾病、とくに神経症との鑑別又は合併について十分に考慮すること。
(3)上記の各症状に対する診断病名は多種多様にわたることが考えられるので、単に診断病名のみをもって認定することなく、医師の各種検査により詳細に把握された症状及び所見を基にして行ない、とくに、精神症状については精神科医の意見を求め慎重に検討すること。
一酸化炭素中毒の治ゆについて
認定基準では、一酸化炭素中毒の治ゆについても言及しています。
まず、一酸化酸素中毒による症状が医学上一般に承認された治療によっても、その効果が期待できなくなり、その症状が固定したと認められる時期をもって治ゆとすると、他の傷病と同様に一般論を述べた上で、以下の留意点を挙げています。
一酸化炭素中毒の治ゆの留意点
(1)一酸化炭素に因る中毒症状は、ばく露から離れて後概ね、2年以内に固定するものと推定されること。
(2)従来の都市ガスに因る一酸化炭素中毒の症状より勘案するに、臨床症状に多数の動揺が認められても全般として平衡状態に達したと認められる時をもって症状固定の時期とするのが妥当であること。