電離放射線障害の労災認定の前提について取上げます。
電離放射線障害
労基法は、業務上疾病として、「電離放射線にさらされる業務による急性放射線症、皮膚潰瘍等の放射線障害、白内障等の放射線眼疾患、放射線肺炎、再生不良性貧血等の造血器障害、骨壊死その他の放射線障害」を規定しています(労基法施行規則別表第1の2第2号の5)。
電離放射線によるがん
労基法は、業務上疾病として、「電離放射線にさらされる業務による白血病、肺がん、皮膚がん、骨肉腫、甲状腺がん、多発性骨髄腫又は非ホジキンリンパ腫」を規定しています(労基法施行規則別表第1の2第7号15)。
電離放射線に係る疾病の認定基準について(昭和51年11月8日基発810号)
電離放射線障害は、認定基準が定められています。認定基準は、①電離放射線障害の類型と②疾病の認定について言及しています。

類型については、以下の「電離放射線障害の労災認定基準」を参照
電離放射線障害の労災認定の前提について取上げます。
電離放射線の被ばく
電離放射線障害の労災認定にあたって、電離放射線の被ばくを検討する必要があります。被ばく線量だけでなく、被ばく形式についても十分に把握・検討する必要があります。
①外部被ばくと②内部被ばくがあります。③急性被ばくと④慢性被ばくがあります。⑤全身被ばくと⑥局所被ばくがあります。
①外部被ばく
放射線源が体外にあって受ける被ばくを外部被ばくといいます。
エックス線、ガンマ線、中性子線は、身体の深部まで透過するので、造血器その他臓器に影響を及ぼしやすいとされます。
アルファ線、ベータ線は、透過力が弱く、皮膚の部分でほとんどエネルギーが吸収されます。そのため、皮膚に影響を及ぼしやすいとされます。
②内部被ばく
放射線物質を含むガス、蒸気、粉じん、液体などを吸引したり、飲み込むことで体内に取り込まれた放射線同位元素による被ばくを内部被ばくといいます。
アルファ線、ベータ線がほとんどのエネルギーを周囲の組織に与え、身体内部の重要な臓器・組織に大きな影響を与えるおそれがあります。
③急性被ばくと④慢性被ばく
急性被ばくは、短期間に大きな線量を被ばくすることです。電離放射線の取扱いの誤りによる事故、電離放射線による治療を受けた場合が典型です。
慢性被ばくは、長期間にわたり電離放射線を被ばくすることです。放射線業務従事者が微量を長期間にわたって業務上で電離放射線に被ばくすることがあります。身体の内部に長くとどまる性質の放射性物質を体内に取り込む、病気の治療・診断のため長期間にわたってエックス線検査を繰返す場合も慢性被ばくの例です。
⑤全身被ばくと⑥局所被ばく
全身の臓器・組織が被ばくするのが、全身被ばくです。
①外部被ばくは、エックス線、ガンマ線等の透過力の大きい電離放射線を全身に浴びた場合、電離放射線障害が発症しやすいです。アルファ線、ベータ線のように透過力が弱く身体の深部に達しない電離放射線の外部被ばくは、線量が少ない場合、全身被ばくによる電離放射線障害は発症しにくいです。
身体のある部分だけが被ばくするのが、局所被ばくです。放射線物質を手で取扱う場合、手指の被ばく線量が身体の他の部分に比べて、著しく多くなることがあります。
電離放射線にさらされる業務
電離放射線にさらされる業務としては、電離放射線障害防止規則の規制対象として安衛法施行令別表第2に掲げられている業務が想定されます。
電離放射線にさらされる業務
①エックス線装置の使用、エックス線の発生を伴う装置の検査業務
②サイクロトロン、ベータトロンその他の荷電粒子を加速する装置の使用、電離放射線の発生を伴う装置の検査業務
③エックス線管、ケノトロンのガス抜き、エックス線の発生を伴う検査業務
④厚労省令で定める放射線物質を装備している機器の取扱い業務
⑤放射線物質、電離放射線によって汚染された物の取扱い業務
⑥原子炉の運転業務
⑦坑内における核原料物質の採掘業務