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安全配慮義務の作業内容上の防止義務に関連する最高裁判決(労災に関連する判例)


労災の事案ではありませんが、安全配慮義務の作業内容上の防止義務に関連する最高裁判決を紹介します。

最高裁平成13年4月26日判決

 定期健康診断で、胸部エックス線検査の受診を拒否した教員を教育委員会が減給処分にした事案です。減給処分の有効性が争われました。

 使用者は、労働者が危険な作業方法をとらないように教育し、労働者が危険な行動をとっている場合、それを是正する義務があります。労働者が危険な行動をとっている場合、使用者がそれを禁止し、安全な方法を命じたにもかかわらず、労働者が従わない場合は、懲戒処分を課すことができると解されています。

事案の概要

 上告人は、昭和54年4月から同59年3月まで市立南中学校に教諭として勤務していた。

 市教育委員会は、同58年4月25日、南中学校において、同年度教職員定期健康診断の一環として結核の有無に関するエックス線間接撮影の方法による検査を実施し、同校のA校長は、教職員にこの検査をあらかじめ周知させてその受検を命じたが、上告人は、病気治療のためのエックス線検査による過去のエックス線暴露が多くこれ以上の暴露を避けたい旨の意思を表明して、これを受診しなかった。

 公務等の都合で上記のエックス線検査を受診することができなかった者を対象とするエックス線検査が同年5月23日に南中学校東門付近で実施されることになり、A校長は、上告人に対し、これを受診するよう命じたが、上告人は、同様の理由を挙げて、その受診を拒否し、A校長は、更に、上告人に対し、同月31日に市役所で第2回目の未受検者検診が行われる予定であるのでその受検も可能である旨通知したが、上告人はこれをも受診しなかった。

 A校長は、市教委とも相談の上、同年6月20日、上告人に対し、文書を交付してエックス線検査の受診を命じたが、上告人はこれにも従わなかった。市教委の学校指導室長は、同年8月22日、上告人に対し、医学的にみて受診することができない理由があるのであれば医師の証明書を提出するか、又はエックス線撮影を受診するかをし、その結果を同月30日までに提出するよう伝え、上告人は、いったんは医師の証明書を提出することを約したが、同証明書の提出も胸部エックス線検査の受診もしなかった。

 上告人は、同年3月22日、保健所でかくたん検査及び血沈検査を受け、同年5月17日付けで異常なしとの結果を得て、その事実をA校長に報告した。

 教育委員会は、昭和59年2月1日付けで、上告人には地方公務員法29条1項1号及び2号の事由があるとして、上告人の同日から同年4月30日までの給料及びこれに対する調整手当の合計額の10分の1を減ずる旨の減給処分をした。

最高裁の判断

 最高裁は、以下のとおり、減給処分を適法と判断しました。

 市町村立中学校の教諭その他の職員は、その職務を遂行するに当たって、労働安全衛生法66条5項、結核予防法7条1項の規定に従うべきであり、職務上の上司である当該中学校の校長は、当該中学校に所属する教諭その他の職員に対し、職務上の命令として、結核の有無に関するエックス線検査を受診することを命ずることができるものと解すべきである。

 上告人は、市教委が実施した昭和58年度の定期健康診断においてエックス線検査を受診せず、A校長が職務上の命令として発したエックス線検査受診命令を拒否したというのであり、上記の事実をもって結核予防法8条、労働安全衛生法66条5項ただし書の要件を満たすものということもできないから、上告人が当時エックス線検査を行うことが相当でない身体状態ないし健康状態にあったなどの事情もうかがわれない本件においては、A校長の上記命令は適法と認められ、上告人がこれに従わなかったことは地方公務員法(平成11年法律第107号による改正前のもの)29条1項1号、2号に該当するというべきである。


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