労災の業務上疾病の内、レーザー光線による眼疾患・皮膚疾患の労災認定基準を取上げます。
レーザー光線による眼疾患・皮膚疾患
労基法施行規則は、レーザー光線にさらされる業務による網膜火傷等の眼疾患・皮膚疾患を業務上疾病として、例示列挙しています(別表第1の2第2号の3)。
レーザー光線ばく露により眼疾患・皮膚疾患が発生しやすい業務
レーザー光線は、人工的につくる電磁波です。一般の光線と異なり、単一波長で位相のそろった指向性の強い光線です。レーザー光線の波長は、紫外部から遠赤外部までがあります。レーザー光線は光の一般物理法則に基づき、反射・透過・屈折・吸収されます。
したがって、レーザー光線による作用は、レーザーのエネルギー、波長、被ばく時間、ばく露の形式、照射を受ける組織の光学的性質によって決まります。
レーザー光線は、微小溶接、加工、孔あけ、ダイヤモンドのカット、炭化タングステン・コバルト等の超硬合金の切断、通信、測距、剥離した網膜の治療、立体映画の製作など、工業用・医療用・研究用として多方面で用いられています。
眼疾患
波長400ナノメートル以下の紫外線部のレーザー光線は角膜で吸収されるので、角膜の障害が生じます。1,400ナノメートル以上の赤外部のレーザー光線も角膜に吸収され、角膜の障害を生じさせることがあります。
可視、近赤外領域のレーザー光線は、水晶体の作用で網膜上に焦点を結び、網膜に障害が生じます。
レーザー光線による網膜損傷は、熱による網膜焼灼、凝固で、重症例では浮腫、壊死、出血、炭化、網膜剥離、失明に至ることがあります。
皮膚疾患
レーザー操作中に生じる急性皮膚病変として、軽症のものは日焼け、日光皮膚炎に準じる変化が見られます。高出力のレーザー光線を受けることで生じる皮膚障害として火傷があり、組織の熱凝固、壊死、炭化等が生じるとされています。
労災認定基準
レーザー光線による眼疾患・皮膚疾患が労災と認定されるには、一般的認定要件として、以下の4つの要件を充足していることが必要です。
レーザー光線による眼疾患・皮膚疾患が労災と認定されるための一般的認定要件
(1)当該作業条件、作業従事期間等からその有害程度が当該疾病発生原因とするに足りること
(2)当該疾病に特有な症状又は医学的経験則上、通常起こり得ると認められる症状が出現していること
(3)業務に起因しない他の原因によるものでないこと
(4)医学上療養が必要と認められる症状であること
医学的診断要件
一般的認定要件の他に、医学的診断要件として、①レーザー光線の種類・被ばく時間、②臨床検査項目が必要になります。
眼疾患の臨床検査項目
眼疾患の臨床検査項目は、以下のものです。
眼疾患の臨床検査項目
①眼瞼・外眼部の視診、眼底検査
②視力検査、立体視検査
皮膚疾患の臨床検査項目
皮膚疾患の臨床検査項目は以下のものです。
皮膚疾患の臨床検査項目
①皮膚の検査
②角化異常、異常乾燥、色素沈着、腫瘍、光過敏性皮膚疾患の有無の把握と他の疾患との鑑別