労災の業務上疾病の内、タール様物質による疾病の労災認定基準を取上げます。
タール様物質による疾病の認定基準について(昭和57年9月27日基発329第2号)
タール様物質のばく露する作業に従事した労働者に発症した疾病は、この認定基準に従って、労災認定が行われます。
タール様物質
タールは、本来、石炭、木材等の固状有機物質を乾留する際に生ずる褐色ないし黒色の粘稠性液体をいいいます。認定基準では、コールタール・木タール・石油タール様物質(石油又はその留分である軽油、ナフサ等を熱分解し、これを蒸留したときに残油として得られる黄褐色ないし黒色の粘稠性液体)・コールタールピッチ・石油ピッチ(アスファルト)等を「タール様物質」と総称しています。このタール様物質は、多環式芳香族炭化水素を多種類含有する混合物です。
タール様物質にばく露する作業
労働者がタール様物質にばく露する作業場は、タール様物質の発生を伴う作業場、タール様物質を製造し若しくは加工する作業場又はタール様物質若しくはその加工品を使用する作業場に大別することができます。
タール様物質の発生を伴う主な作業場としては、コークス炉及びガス発生炉があります。ただし、現在、ガス発生炉は使われてません。
タール様物質を製造し、又は加工する作業場としては、タール蒸留所、タール加工工場等があります。
タール様物質又はその加工品を使用する作業場には、種々のものがあります。その主なものとして、以下のものを挙げることができます。
タール様物質又はその加工品を使用する作業場
ピッチコークス製造工場、アルミニウム精錬工場、電極製造工場、カーボンブラック製造工場
鋳物砂を配合する鋳物工場、鋼管等の防蝕塗装、木材防腐、屋根等の防水・防蝕塗装、船舶塗装
道路舗装等を行う作業場、耐火煉瓦製造工場、煉炭製造工場、コークス原料炭製造工場等
このうち、高濃度のタール様物質にばく露する作業場としては、コークス炉、ガス発生炉、ピッチコークス炉、アルミニウム精錬工場等があります。
タール様物質による疾病
タール様物質による疾病としては、①がんと②皮膚がん以外の皮膚疾患が挙げられています。
がん
がんの種類として、認定基準は、①肺がんと②皮膚がんを挙げています。
①肺がん
製鉄用コークス又は製鉄用発生炉ガスを製造する工程における業務のうち、コークス炉上若しくはコークス炉側又はガス発生炉上において行う業務に従事した労働者に発症した肺がんであって、次の要件をすべて満たすものは、労災と認定されます。
コークス炉上若しくはコークス炉側又はガス発生炉上において行う業務に従事した労働者に発症した肺がんが労災と認定される要件
①上記の業務に5年以上従事した労働者に発症したもの
②原発性のものであること
②皮膚がん
タール様物質にばく露する業務に従事した労働者に発症した皮膚がんであって、次の要件をすべて充足する場合は、労災と認定されます。
タール様物質にばく露する業務に従事した労働者に発症した皮膚がんが労災と認定される要件
①タール様物質にばく露する業務に相当期間従事した労働者に発症したもの
②皮膚に原発した上皮性のもの
皮膚がん以外の皮膚疾患
タール様物質にばく露する業務に相当期間従事した労働者に発症した以下の皮膚障害で、医学上療養を必要とすると認められ、かつ、それが当該業務以外の原因によるものでないと判断されるものは、労災と認定されます。
接触皮膚炎、光過敏性皮膚炎、皮膚色素異常、座瘡様皮疹、限局性毛細血管拡張症、腫瘍性病変(悪性腫瘍を除く)