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上肢障害の労災認定


業務上疾病のうち、上肢障害の労災認定基準を取り上げます。

上肢作業に基づく疾病の労災

「電子計算機への入力を反復して行う業務その他上肢に過度の負担のかかる業務による後頭部、頸部、肩甲帯、上腕、前腕又は手指の運動器の障害」が、業務上の疾病として規定されています(労基法施行規則別表第1の2第3号4)。

 この規定は、平成22年に改正されました。改正前は、いわゆる頚腕症候群を対象としていました。その後、平成9年に上肢作業に基づく疾病の業務上外の認定基準によって、広範囲の上肢を使用する作業の認定基準が改正されました。そして、平成21年の専門検討会の報告を踏まえて、規定自体が改正されるに至りました。

上肢障害の労災認定の基本的な考え方

 認定基準を見る前に、上肢障害の労災認定の基本的な考え方を説明します。

 上肢障害が問題になる作業では、上肢の動的・静的筋労作が認められます。作業や姿勢の特殊性が、業務に内在する危険因子として、上肢障害の基礎要因になっています。

 もっとも、基礎要因が認められるからといって、直ちに、上肢障害が発生するわけではありません。たとえば、これまで上肢を過度に使用した経験のない労働者が上肢作業に従事すれば、作業の翌日や2,3日後に、肩・腕の痛みを自覚することは一般的です。このような場合は、もちろん、生理的範囲内のもので、医学上療養が必要なものではありません。

 つまり、基礎要因に加えて、過大な作業量や過度の緊張を伴う作業といった上肢障害の発症を促進する要因が存在する場合に、上肢障害の発症可能性が高くなると考えられています。

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考えられる主な促進要因に、以下のようなものがあります。

主な促進要因

①過度な作業量

②長時間作業、連続作業

③他律的かつ過度な作業ペース

④過大な重量負荷又は力の発揮が必要な作業

⑤迅速かつ正確な判断を必要とするために、過度の緊張を伴う作業

⑥不適切な作業環境

上肢作業にもとづく疾病の業務上外の認定基準

 前述のとおり、平成9年2月3日基発65号「上肢作業にもとづく疾病の業務上外の認定基準について」という通達が出されています。上肢障害の労災認定は、この基準に基づいて行われます。

上肢障害の認定要件

 次の(1)~(3)のいずれもを満たし、医学上療養が必要と認められる上肢障害は、労災と認定されます。

上肢障害の認定要件

(1)上肢等に負担のかかる作業を主とする業務に相当期間従事した後に発症した

(2)発症前に過重な業務に就労した

(3)過重な業務への就労と発症までの経過が医学上妥当なものと認められること

上肢障害とは?

 「後頭部、頸部、肩甲帯、上腕、前腕又は手指の運動器の障害」が対象です。これらを上肢障害と呼んでいます。

 運動器障害は、神経、肩、関節系、血管系とともに、頸椎やその周辺の軟部組織の障害とされています。

 したがって、上肢障害の範囲は、幅広いものが該当します。もっとも、上肢障害という疾病が存在するわけではありません。労災の認定は、具体的な疾病名で行われます。頸肩腕症候群、肘部管症候群、手関節炎、腱鞘炎などが例示されていますが、例示されていない疾病についても労災と認定されることがあります。

上肢に負担のかかる作業

 以下の4つの作業が、上肢に負担のかかる作業として挙げられています。

上肢に負担のかかる作業。

①上肢の反復動作の多い作業

②上肢を上げた状態で行う作業

③頸部、肩の動きが少なく、姿勢が拘束される作業

④上肢等の特定の部位に負担のかかる状態で行われる作業

①上肢の反復動作の多い作業の具体例

上肢の反復動作の多い作業

OA機器、VDT機器等の操作を行う作業

運搬、積込み、積卸し作業

多量の冷凍魚等の切断、解体等の処理を行う作業

手作りによる製パン、製菓作業

ミシン縫製、アイロンがけ作業

手話通話作業

給食等の調理作業

②上肢を上げた状態で行う作業

上肢を上げた状態で行う作業

流れ作業による塗装、溶接作業

天井など上方を作業点とする作業

③頸部、肩の動きが少なく、姿勢が拘束される作業

 検査作業、特に顕微鏡や拡大鏡を使った作業

④上肢の特定の部位に負担のかかる状態で行う作業

 保育、看護、介護作業

相当期間とは?

 相当期間とは、原則として6か月程度をいうとされています。

 腱鞘炎等については、作業従事期間が6か月に満たない場合でも、短期間のうちに集中的に過度の負担がかかった場合には、発症することがあるとされています。

過重な業務とは?

 過重な業務とは、上肢等に負担のかかる作業を主とする業務において、医学経験上、上肢障害の発症の有効な原因と認められる作業量を有するもので、原則、以下のいずれかに該当するものをいうとされています。

過重な業務

(1)同一事業場における同種労働者と比較しておおむね10%以上業務量が増加し、その状態が発症前3か月程度にわたる場合

(2)業務量が一定せず、①または②に該当するような状態が発症前3か月程度継続している場合

 ①業務量が1か月の平均では通常の範囲内であっても、1日の業務量が通常の業務量のおおむね20%以上増加し、その状態が1か月のうち10日程度認められるもの

 ②業務量が1日の平均では通常の範囲内であっても、1日の労働時間の3分の1程度にわたって業務量が通常の業務量のおおむね20%以上増加し、その状態が1か月のうち10日程度認められるもの

 同種労働者とは、同様の作業に従事する同性で年齢が同程度の労働者をいうとされています。

 過重な業務かどうかは、業務量から判断するとされます。なお、業務量から過重な業務と直ちに判断できない場合であっても、通常業務による負荷を超える一定の負荷が認められ、以下の要因が顕著に認められる場合は、その要因を総合して評価するとされています。

総合評価の対象となる要因

①長時間作業、連続作業

②他律的かつ過度な作業ペース

③過大な過重負荷、力の発揮

④過度の緊張

⑤不適切な作業環境


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