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新型コロナウイルスと労災


新型コロナウイルスに感染した場合、労災と認定されることはありますか?

新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて(基補発428第1号)

 依然として、新型コロナウイルスの感染拡大が続いています。新型コロナウイルスに感染した場合、労災と認定されることはあるのでしょうか?

 新型コロナウイルスに感染した場合の労災の認定に関して、令和2年4月28日付の厚労省の通達があります。以下、通達の概要を説明します。

基本的な考え

 新型コロナウイルス感染症は、労基法施行規則別表第1の2第6号1又は5の業務上疾病に該当すると扱われます。

 別表第1の2第6号は、「細菌、ウイルス等の病原体による次に掲げる疾病」として、以下の2つを挙げています。

業務上疾病として扱われる「細菌、ウイルス等の病原体による次に掲げる疾病」

①「患者の診療若しくは看護の業務、介護の業務又は研究その他の目的で病原体を取り扱う業務による伝染性疾患」

⑤「1から4までに掲げるもののほか、これらの疾病に付随する疾病その他細菌、ウイルス等の病原体にさらされる業務に起因することの明らかな疾病」

 当分の間、新型コロナウイルスに関しては、感染経路が特定されなくても、業務によって感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと認められる場合は、労災と認定されます。

国内の医療従事者等の場合

 上記のとおり、患者の診療・看護・介護の業務等に従事する医師・看護師・介護従事者等が新型コロナウイルスに感染した場合、業務外で感染したことが明らかな場合を除いて、原則、労災と認定されます。

医療従事者等

 ここでいう医療従事者等とは、労基法施行規則別表第1の2第6号1の「患者の診療若しくは看護の業務、介護の業務」に従事する労働者のことです。したがって、医療施設や看護施設で勤務していても、これらの業務に従事していない場合は、医療従事者等として扱われません。

 通常、医師、看護師、介護職、理学療法士、診療放射線技師、診療エックス線技師、臨床検査技師、歯科衛生士などは、医療従事者等に該当します。一方、事務員、生活支援相談員、清掃員、調剤に従事する薬剤師などは、医療従事者に該当しないと考えられます。

 もっとも、医療従事者等かどうかは、労働者の職種ではなく、従事している業務内容の実態から個別に判断します。薬剤師でも診療支援や服薬指導などの病棟業務に従事していれば、医療従事者等として扱われます。

国内の医療従事者等以外の労働者で、感染経路が特定された場合

 新型コロナウイルスの感染源が、業務に内在していたと明らかに認められる場合には、労災と認定されます。

国内の医療従事者等以外の労働者で感染経路が特定されていない場合

 新型コロナウイルスの感染経路が不明であっても、感染リスクが相対的に高いと考えられる労働環境下で、業務に従事していた労働者が感染した場合は、業務により感染した蓋然性が高く、業務起因性が認められるかを個々の事案ごとに判断するとされています。

 新型コロナウイルスの感染リスクが相対的に高いと考えられる労働環境下での業務の例として、以下の2つが挙げられています。

 (1)複数の感染者が確認された労働環境下での業務

 労災請求を行う労働者を含め2人以上の感染者が確認された場合が該当します。労働者だけでなく、施設利用者が感染している場合も含まれます。なお、複数の労働者の感染が確認されても、互いに接触の機会がなく、業務での関係もない場合は、該当しません。

 (2)顧客等との近接・接触の機会が多い労働環境下での業務

 厚労省が想定しているのは、小売業の販売業務、バス・タクシー等の運送業務、育児サービス業務等です。

 上記の(1)、(2)に該当しない場合でも、新型コロナウイルスの感染リスクが高いと考えられる労働環境下での業務に従事していた場合は、潜伏期間内の業務従事状況や一般生活状況を調査の上、個別に業務起因性を判断されます。

海外出張労働者の場合

 海外に出張していた労働者は、出張先の国が多数の新型コロナウイルス感染症の発症国で、明らかに高い感染リスクがあると客観的に認められる場合、出張業務に内在する危険が現実化したか?を個々の事案ごとに判断するとされています。


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