労災というと、会社で仕事中の事故によるケガというイメージを持っている人が多いのではないでしょうか。仕事をしていない時の事故によるケガが労災になる場合があります。
仕事中のケガじゃないけど…

この間、休憩時間中に、会社でこけてケガしたんだけど…
休憩時間中だから、労災にならないんだよね?

こけたのは、会社内なんですね。
原因は、床で滑ったとかですか?

うん、床が濡れてて、滑っちゃった。

ウサラさんのケガは、労災ですね。
仕事中のケガじゃなくても労災になる?
労災と認定されるには、①業務遂行性があることを前提に、②業務起因性が認められることが必要です。
①業務遂行性とは、労働者が労働契約に基づき事業主の支配下にある状態のことです。仕事中は、当然、使用者である会社の支配下にあるので、業務遂行性が認められます。仕事中でなくても、休憩時間など、使用者が指揮監督を行う余地があって、その限りで、使用者の支配下にある場合は、業務遂行性が認められます。
したがって、仕事中の事故ではなくても、労災と認められる余地があるのです。

詳しくは、以下の「労災の認定と業務遂行性」を参照
業務遂行性があっても業務起因性があるとは限らない
②業務起因性とは、業務に内在する危険が、現実化したと認められることをいいます。

詳しくは、以下の「労災の認定と業務起因性」を参照
労災の認定と業務起因性
労災と認定されるには、①業務遂行性と②業務起因性があることが必要です。もっとも、労災の認定は②業務起因性の問題といっても過言ではありません。業務起因性の意義を解説します。
①業務遂行性がなければ、②業務起因性が認められることはありません。ただ、①業務遂行性が認められても、業務起因性が認められるとは限りません。
休憩時間中に、会社内にいる場合は、使用者の管理下にあり、使用者の支配下にあるといえます。したがって、①業務遂行性は認められます。しかし、休憩時間中は、自由行動を許されているので、その間の労働者の行動は、私的な行為です。したがって、通常は、休憩時間中の事故に②業務起因性は認められません。
冒頭のウサラさんの事故が労災となるのは、事故が会社の床が濡れていたという施設管理の欠陥に起因するので、②業務起因性が認められるからです。
仕事中じゃないけど、労災になる?
仕事中のケガじゃなくても、労災と認められるのは、どんなケースなのでしょうか?
①休憩時間中のケガ
会社の施設管理の欠陥に起因する事故の場合は、労災と認められます。

詳細は、以下の「就業時間外の災害と労災」を参照
②出張中の事故
出張は、通常、出張の全過程について、使用者の支配下にあり①業務遂行性が認められます。
そして、出張の途中の飲食等の私的な行為に関して生じた災害であっても、それが出張に通常伴う範囲内のものであれば、②業務起因性も認められます。また、ホテルや旅館内の通常の宿泊行為中の事故や食事による中毒死なども、通常は②業務起因性が認められます。

詳細は、以下の「出張中の災害と労災の認定」を参照
③会社の飲み会
会社の飲み会は、一口に飲み会といっても、様々です。単に上司や同僚と飲みに行く場合は、①業務遂行性が認められることはありません。
飲み会が、取引上又は労務管理上の必要性から対外的、対内的に行われた場合、飲み会の世話役等が自己の業務の一環で参加する場合、①業務遂行性が認められることが多いでしょう。それ以外の労働者の場合は、以下の点を総合考慮して、①業務遂行性の有無を判断します。
飲み会の業務遂行性の有無の判断
①飲み会の主催者
②飲み会の目的
③飲み会の内容・経過
④飲み会の参加方法
⑤飲み会の運営方法
⑥飲み会の会費

通常、業務遂行性は認められないでしょう。
①業務遂行性が認められたとしても、飲み会に参加している間の個々の行為が全て業務行為となることはありません。したがって、②業務起因性の判断は、事故の原因に応じて、個別に判断されます。

業務を一時中断し、歓送迎会に途中参加した後、業務を再開するために、会社に戻る際に、研修生を自宅に送る途中の事故を労災と認めた最高裁平成28年7月8日判決も参照
業務遂行性に関する最高裁判決(労災の認定)
業務を中断し、歓送迎会に途中参加した後、業務を再開するため、会社に戻る際に、研修生を自宅に送る途中で発生した交通事故が労災か?を判断した最高裁判決を紹介します。
仕事中のケガじゃないけど、労災かも?と思っている方へ
仕事中の事故でケガをしたわけではないけど、労災かもと少しでも思っている人は、弁護士に相談してください。もしかしたら、その事故、労災かもしれません。
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