労災の業務上疾病の内、有機溶剤による疾病の労災認定を取上げます。
有機溶剤による疾病と労災
有機溶剤による疾病は、労基法施行規則別表第1の2第4号1及び厚労省告示により、業務上疾病として扱われます。
有機溶剤
有機溶剤は、揮発性が高いのが特徴です。有機溶剤の蒸気が空気中に発散しやすく、高濃度ばく露や長期慢性ばく露の危険と関連の深い性質です。
吸入経路
有機溶剤の吸入経路は、吸入による呼吸器からの吸収が最も重要です。肺から直接血液中に入って、他の臓器に運ばれることで、中毒の原因となります。
また、皮膚に付着することで、その部位から吸収され、血液中に入ります。
有機溶剤による疾病の症状
有機溶剤による疾病の症状は、有機溶剤の種類によって様々です。多くの有機溶剤に共通に現れる症状もあります。
麻酔
代表的なのは、麻酔です。高濃度蒸気の吸入による急性中毒の形で症状が現れます。頭痛・頭重・興奮状態・眠気・酩酊状態を経て意識喪失に至ります。重篤な場合は、死に至ります。
麻酔に至らない気中濃度の有機溶剤
麻酔に至らないような気中濃度の有機溶剤の蒸気に長期間ばく露することで、以下のような症状が現れます。
主な症状
頭痛
頭重
眠気
悪心
心悸亢進
倦怠感
肺などから血液中に吸収された有機溶剤
血液中に吸収された有機溶剤は、肝臓にも達します。毒性の強い有機溶剤や大量の有機溶剤は、肝細胞で代謝しきれず、肝細胞が損傷を受けます。
軽い急性中毒を繰り返したり、重い中毒の場合、肝細胞の損傷が著しくなり、肝機能障害を引き起こします。
有機溶剤による疾病の診断
有機溶剤による疾病の診断のために、職歴・ばく露した有機溶剤の種類・ばく露の程度を把握する必要があります。以下のような臨床検査も行われます。
自覚症状の検査
有機溶剤の取扱者には、他覚的・客観的な影響が出現する以前に、様々な自覚症状が現れます。有機溶剤による疾病の診断に当たり、自覚症状は重要な指標です。
ただし、有機溶剤取扱者に現れる自覚症状の多くは、過労、肝臓・腎臓の疾患でもみられる特異的でない症状です。したがって、作業環境が有機溶剤による健康被害を引き起こすのに十分なほど劣悪で、一般の疾病の存在を否定できる場合に、自覚症状により有機溶剤による疾病の診断ができると考えられます。
肝機能検査
令和2年7月から有機溶剤にばく露される労働者に対して実施される有機溶剤特殊健康診断の必須項目から「尿中の蛋白の有無の検査」が除外されました。医師が必要と認める場合、二次健康として肝機能検査・腎機能検査が実施されます。